【おすすめ本】もっとも美しい数学 ゲーム理論
どうも、ご無沙汰しております。
Sasuke Financial Lab株式会社のエンジニアのカサマツです。
今日は、自分がおすすめをしたい本「もっとも美しい数学 ゲーム理論」についてご紹介したいと思います。
今回のお話は、弊社の朝礼時にLTで紹介した内容をアレンジしたものです。
はじめに
ゲーム理論と聞くと、主に経済学の講義などで扱うテーマであり、専門性が高いと思われることが多いかもしれないですが、この本では経済学に限定したゲーム理論の紹介ではなく、生物学や人類学など様々な分野に応用できることを説明した本です。
また、定理を説明するのではなく、それを考案した人や関わる人のエピソードや人物史が描かれている点も、敷居を低く感じさせる特徴の一つかもしれません。
(人物史に着目している点は、「フェルマーの最終定理」のアプローチに近いかもしれません)
ゲーム理論とは
さまざまな教科書で例題として挙げられるゲーム理論については、第二章で整理されています。これに似た話は自分も他の本で読んだことがありました。
ボブはバスに乗った方が、支払うお金が少ないが、アリスもそれを知っているので、歩いていくはず。
5ドル支払うぐらいなら歩いた方が良いが、それを逆手に取った場合、6ドル支払わないと…
ということを考えていくと、「利得行列」というものを計算して、ジャンケンのように、一定の確率で手を変える、混合戦略を用いるとよいという結論になります。
本書のポイント
第四章 アヒルの餌やり(メイナード・スミスの「戦略」)
まず最初にこの本で面白いと感じた箇所は、第三章のアヒルの餌やりの話です。
本の内容を要約しますと…
多くのアヒルが集まれば集まるほど、一羽のアヒルが餌を得られる確率は減少します。
そのため、餌を投げられる頻度が多い、Aさん側に多くのアヒルが集まるのですが、アヒルは当然、餌を投げ入れられる頻度を観察し、餌を得られる確率を計算して、行動を決めているわけではありません。
あくまで、本能的な、自然の摂理のようなもので、アヒルは意思決定をおこなっているのでしょう。
第四章 鳥星
第四章ではアヒルの例の他に、鳥星という思考実験の例が紹介されていました。
こちらは進化論に関連するお話でしたが、さきほど紹介したアリスとボブの利得行列とおなじように、鳥たちがどのような戦略を取ればよいのか、ということをゲーム理論も交えて、具体的に示されています。
第7章 ケトレーの「統計」、マクスウェルの「分子」
第4章以降は、脳神経科学や人類学、物理学との関連性が次々に示されていきます。
とくに第7章の社会物理学のお話では、先ほどのアヒルと同じように、人間社会においても、特定の状況下では、アヒルと同じように振る舞うということを示されているだけではありません。
マクスウェルが示そうとした気体における、分子の振る舞いについても、同じようなことが言えるということです。
気体の「温度」は、分子の動きの速度と結びついている、ということは中学校の理科の授業でも取り上げられているような内容ですが、
個々の分子は一定の速度で動いているのではなく、速く動く分子もいれば、遅く動く分子もおり、ビリヤード球のように、それぞれがぶつかって、平均的な分子の速度=温度ができている、というものです。
本書のまとめ
本書を読むまでは、ゲーム理論は経済学の一分野だと考えていたのですが、さまざまな学問と結びつく理論であることを、具体的な例を用いて示されます。(ネットワーク理論や確率論なども)
身近な現象がゲーム理論を用いて説明できるということを知れたことで、大きく自分の思慮を深められたと思います。
あわせて読みたい
本書と合わせて、ぜひ、下記の2冊もおすすめしたいです。
前者は「サピエンス全史」で知られる、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の本で、「サピエンス全史」の続編に当たります。
後者は量子力学に関する本ですが、量子の世界においても、ゲーム理論含めた言及がなされます。
個人的には、「ホモ・デウス」の中で説明される、ボノボの意思決定に関する話や「感情は排気ガスのようなものである」という話が、ゲーム理論の性質である、ミクロ・マクロの考え方と合わせて、深い理解に至るような気がしました。
おわりに
今回は、ゲーム理論に関するおすすめ本を紹介しました。
「あわせて読みたい」で紹介した本も含めて、個人的に非常に感銘を受けた本です。
ではまた!