部活動で事故が起きた!そのときどうする?(不法行為)


こんにちは。弁護士の紙尾浩道です。

本日は、部活動で事故が起きた!そのときどうする?(不法行為)の話をしたいと思います。

部活動で事故が起きた場合、大きく分けて、事故について加害者がいる場合、加害者がいない場合に分かれます。

あなたが被害者だった場合を考えてみてください。

加害者がいる場合、加害者に事故によって生じた損害を回復してもらおうということになりますよね?

例えば、ラケットでわざと殴られて、右腕の骨にヒビが入ってしまったとしましょう。

仲のいい友達からだったので、許してやることにしました。

でも、損害は生じます。つまり、損害というのは、気持ちの面で許してあげるかどうかとは無関係に生じます。

具体的には、まず、病院代がかかりますね。
そして、病院に行くための交通費、病院に行くために仕事を休んだ休業補償・・・

意外と色々あり、一つ一つ話すと今日の本題に入れなくなるので、ひとまずおいておきます。

この損害回復制度を「不法行為」と呼んでいます(民法709条)。

不法行為という制度は、契約を結んでいなくても使えるもので、典型的には交通事故に遭ってしまった時にお金を払ってもらえるのがこのシステムの身近な使用例です。

交通事故の加害者と、初めからナントカ契約を結んでいることはありませんよね?
そう、赤の他人に、法的に保護される権利・利益を侵害されてしまった時でも、使えるのがこの制度の最大のポイントです。

部活動で、加害者になりうるとすれば、部員、監督、教師などが考えられますが、これらの人たちは原則として不法行為制度の対象になり得ます。

ただ、公立学校の先生だけは、公務員専用の不法行為制度である「国家賠償法」の適用を受ける可能性が高く、先生に直接お金を支払ってもらわずに、市区町村や都道府県から損害の填補を受けることになります。

難しいですね、すみません。
要するに民間でない、公務員が仕事中の範囲で、「不法行為」制度の対象となるような場合には、特別に「国家賠償」という制度に切り替わり、市や県が代わりにお金を払ってくれるのです。

また、直接の加害者が、生徒の場合、その本人だけでなく、活動を監督する立場にある者(コーチや顧問)にも、損害の填補を求めることができる場合があります。

これは、活動を監督する立場にある者も、事故を予測して回避するための方策を考える責務があるからという理屈になっていて、その責務を怠った結果、損害が生じてしまったではないか!と言える場合に、不法行為制度を発動するパターンです。

以上の不法行為制度以外に、契約をしていた人に対して、損害の填補を求められることがあります。

具体的には、学校に対して、損害賠償請求をすることができる場合があります。

学校は、生徒の支払う授業料によって成り立っています。

言い換えると、学校と生徒との間には、契約が存在し、学校側はこれによって授業料という利益を得るため、教師を雇用しています。

学校側は、授業を提供するだけではなく、生徒の安全に配慮しておく義務を負っているんだと解釈されていますので、この契約に違反した!と法的に言える場面もあり、これを安全配慮義務違反などと呼んだりします。

そりゃそうですよね。学校が、生徒の机をケバケバにささくれ立ったものを使わせて、しょっちゅう手に怪我をさせる環境を提供して、偉そうに、「授業はきちんとやっている!」と言ってきても納得いかないですし。

もっと極端に言えば、校庭の至る所に、金属の刃物が埋まっていて、うまいこと避けながら暮らしてと言われても困ります。

ここまでは、加害者がいる場合を想定しましたが、それ以外に、加害者がいない、または加害者的なポジションになってしまった人がいるけれど、注意義務に違反していなかった(過失がない)ので、不法行為制度を発動できない場合を考えます。

残念ながらこのような場合には、不法行為制度は発動できません。そのため、治療費や会社を休んだ給料の減少も、自分の負担です。

例えば、ルールに従ってプレーしていたけど、たまたま衝突してしまったとか、自分で転んで怪我をした場合などがこちら。

おそらく、日常生活ではこのパターンの方が多いでしょう。

こんな時は、誰にも治療費払え!と言えませんので、自衛手段が必要です。

そのような場合に備えて、毎月や、大会ごとに少額のお金を「保険料」として支払い、万が一、高額な治療費がかかってしまった際には、保険が下りるという制度がありますので、ぜひ活用してください。

以上、部活動で事故が起きた!そのときどうする?(不法行為)の話でした。

では、また。

記事をお読みいただきありがとうございます。弁護士は縁遠い存在と思われないよう、今後も地道に活動をしようと思いますので、ご支援よろしくお願いします。