テニス部に入部するには…(その3 錯誤)

こんにちは。弁護士の紙尾浩道です。

前回まで、新入生のラケット購入の場面を通じて法律のことをお伝えしましたが、今回も、同じ事例で考えてみます。

新入生のあなたは、高校1年生。お店でラケット1本を3万円で購入するべく、母親から現金3万円をもらって、さっそくお店へ行きました。

あなたが行きついた大型量販店には、スポーツ用品がずらーっと。店員さんに声をかけるのは恥ずかしかったので、自分で気に入った1本を選びました。

「よーし、これなら軽くて持ちやすいし、振ってみても軽くて良い感じ!」(心の声)他のラケットだと、縦横の糸が張っていないものも並んでるのはなんでだろう。メーカーによってこだわりが違うのかな?ま、でもラケットはラケットだし、大丈夫だろう。

早速、レジにならんでお会計。店員さんは、慣れた手つきで梱包してくれ、晴れてマイラケットを入手しました。

うれしくて早速、近くの壁打ち施設に行ってみると、あれ、なんだか自分のラケットだけ小さい?気のせいではない、やはりどう考えてもラケットが小さい。

そう、慌てていて、子供用ラケット(25インチ)を購入してしまっていたのです。急いで交換しに行きました。

さて、ここからは、法律論。お店は、レシートさえ見せれば、顧客に不便をかけて、悪い評判が立つことを嫌い、きっと取り替えてくれると思いますが、法律上はどう評価できるでしょうか。

新入生は、レジにラケットを持って行き、「これください」と言ってレジにラケットを起きました。店員さんは、そのラケットのバーコードを読み取り、「1万5000円です」と新入生の購入申し出に応じましたから、これにて売買契約が成立しています。

前々回の記事のとおり、売買契約が成立すると、買主(新入生)には代金支払義務が、売主(お店)には目的物引渡義務が生じるはずです。

今回の事例では、お互いにこれを履行しているため、もはや誰にも義務は残っていないはずです。

こんな状況ですが、契約を巻き戻す可能性があるのは、錯誤という制度です。簡単に言えば、買おうと思っていたものと、実際に買ったものが異なっていた場合、一定の条件のもと、契約を取り消すことができるという制度です。

どんな勘違いでも錯誤で巻き戻せるというものではないのですが、買う物についての重要な事項に勘違いがあった時には、錯誤によって契約を取り消すという手段が考えられますね。

(何が重要な事項なのか、については、書き出すと止まらないくらい難しい論点がたくさんあるのですが、今回は省略です。)

以上、新入生のラケット購入についてでした!次回からは、いよいよ、部活の練習が始まりますよー!

記事をお読みいただきありがとうございます。弁護士は縁遠い存在と思われないよう、今後も地道に活動をしようと思いますので、ご支援よろしくお願いします。