インターネット上の匿名攻撃に対しての法的論点整理(第7回/全8回)
こんにちは。弁護士の紙尾浩道です。
インターネット上の匿名攻撃に対しての法的論点整理(全8回)。
本日は7回目です。
復習として、全体像が書いてある1回目をご確認ください。
記事を開くのが面倒な方のために、目次だけ書いておきますね。
① プライバシー侵害【2回目】
② 名誉毀損(含む信用毀損)【3回目】
③ 脅迫、強要【4回目】
④ ストーカー行為【5回目】【6回目】
⑤ 業務妨害行為
◆業務妨害行為◆
業務妨害には、大きく2つの種類があります。
まず、条文を見てみましょう!
(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(威力業務妨害)
第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
ナンダカ、ヨンデモ、チガイガ、ワカリマセン?
『威力』つまり、直接自分や、自分の会社に向けて、ビビらせてくる、脅してくる方法なのか、『虚偽の風説を流布』つまり、ありもしない噂話を流したり、『偽計』つまり、騙したり誘惑したりする方法なのかです。
マダヨクワカラナイ・・・
すごーく大雑把に分けるなら、正々堂々妨害するか、コソコソ妨害するかという感じでしょうか。
※さらに詳しくはこちら。
『威力』を用いるとは、人の意思を制圧するに足りる勢力を示すことを指します。
『虚偽の風説を流布』するとは、客観的真実に反する事実を不特定または多数人に伝播させることとされています。
実際に不特定または多数の人に広まることが必要なものではなく、特定かつ少数の人に対してであっても話を伝えれば要件に該当すると解釈されています。
また、客観的真実に反する事実を広めることが問題となるのであり、広めた内容が真実である場合は、偽計業務妨害罪は成立しません。
『偽計』を用いるとは、人を欺罔・誘惑し、あるいは人の錯誤・不知を利用することをいいます。
さて、本記事のテーマは
インターネット
ですから、それになぞらえて考えてみましょう。
まず、『威力』に該当しそうなものとしては、爆破予告がありますね。
掲示板やメッセージで、どこどこを爆破する!などと書いたせいで、そのお店や学校などが臨時休業するニュース、たまに見かけますよね?
この行為は、威力業務妨害に該当することが多いと思われます。
犯罪行為なので、警察に相談して対応を考えるのが良いと思います。
続いて、『虚偽の風説の流布』としては、「〇〇中華は、ゴキブリの粉末が入っている』などという口コミを書き込んだりする例が挙げられます。
これは何となく理解しやすいですね。
ちなみに、上にも書いた通り、「真実であれば処罰されない」のが特徴なので、本当にゴキブリの粉末が入っていたら、処罰されません。笑
脱線しますが、私はラーメン二郎やそのインスパイア店が大好きですが、学生の頃、まことしやかに、あそこまで中毒性があるからには、何か依存したくなる成分が入ってるに違いない!と言われていたりもしましたね。
おそらくただの都市伝説ですが、飲食店にとって、異物やおかしなものが入っているという告知は打撃が大きいので、気をつけなければいけませんよね。
最後に、『偽計』の業務妨害。
これは少し想像しにくいかもしれません。
例えば、ニセの注文でピザを大量に頼んで、業務を妨害するなどです。
これは、何か噂話を流したわけではなく、脅したわけでもないので、偽計に該当します。
インターネットを利用した例でいくと、いわゆるバイトテロという類型、つまり、店の従業員が、ゴミ箱に捨てた食材をもう一度拾って客に提供するようなフリをした動画を撮影してSNSにアップロードするなどの行為です。
どうでしょう、意外と身近な行為もありましたよね?
本記事の読者の皆さんは、そんないたずら自分がしないとは思います。
ただ、被害者になることは十分に考えられるので、知識として知っておいてください!
以上、インターネット上の匿名攻撃に対しての法的論点整理(第7回/全8回)でした。
では、また。