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スポーツ団体に処分される根拠は何だの話

こんにちは。弁護士の紙尾浩道です。

今日は、スポーツ団体に処分される根拠は何だの話をします。

これ、実はタブー視されがちなテーマでして、結構勇気がいります。

数日後に記事が消えていたら、察してくださいね。

突然ですが質問です!

殺人をしたら、刑罰を受けますよね?

あれ、何故ですか??

「そんなの、刑法に定められてるからだよ!」

そのとおり・・・
なんですが、もうちょっと踏み込んで欲しくて。

【刑法】
(殺人)
第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

なんで、人を殺した者は、死刑又は無期・・・の懲役になるんでしょう??

「命は大切だから」

ですか?

惜しいけど、違います。

答えは、『皆さんが、「命は大切」という価値観をもとに、人を殺したら、相応の罰を受けるというルールを作ることに同意したから』です!

「え、そんなルール作るのに賛成した覚えはないよ」

とお思いでしょうか?

たしかに条文を作ったのは、『国会』です。

日本のルール上、法律を作れるのは唯一『国会』のみです。

【憲法】
第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

そして、その国会の構成メンバーである国会議員を選ぶのは、国民です。
言い換えると「あなた」です。

【憲法】
第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。

第四十三条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
② 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。

第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。

つまり、刑法は、あなたも同意して作ったルールなので、守れよということになっているのです。

このような仕組みを「間接民主制」とか「代表民主制」などと呼びます。
なので、愚策を取る国会議員がいた場合、その愚策を取る国会議員を選んだのは自分たちで、さらに次回選び直す権利は国民にしかないので、次回の任期でサクッと解任して新しい人を選ぶというのが、本来の立て付けです。

ただ、残念ながら、新しい人を選ぼうにも情報収集が面倒という人が多いので、結局は理念を掲げる政党ごとで選ぶとか、その政党を応援している知人から勧められてとか、有名だからとかで投票せざるを得ない状態ですよね。

では、本題に戻って、スポーツ団体から処分されるのはなんででしょう?

一言で言うなら、『「日本〇〇協会」に「登録」しているから』です。

自分で、その協会に登録した以上は、協会で定めたルールは守ろうということになっています。

たしかに、国内統括団体は、国内に1つしか認められません(ボクシングはちょっと区別が難しかったりしますが、基本的には、そういう暗黙の了解がありまして、そうでないと国際大会に出られなかったりします。)。

そうすると、その競技で国内の大会に出たり、日本代表選手を目指したりする場合、協会への登録は不可避。

逆の見方をすれば、国内統括団体がなければ、みんなが勝手気ままに「日本代表」とか掲げてしまって、結局誰が代表なのかが分からないだけでなく、国際的にも、あの国の代表とは認められないということです。

つまり、選手はそこに登録しておくことで初めて、正真正銘日本代表になれますし、協会は日本代表にまつわる諸事務を管理監督することで、持ちつ持たれつの関係にあるんですね。

代表以外でも、国内統括団体が定めたルール、ポイントに従ってランキングが付与されたりしますが、自由だと、結局誰が強いってことになるのかわからないですよね。

こちらも、選手は登録しておくことで初めて日本国内のポイントレースに参戦できますし、協会は、競技会にまつわる諸事務を管理監督することで、持ちつ持たれつの関係です。

と、いうことで、処分が許される理由は、あなたが協会登録のメリットと引き換えに、ルールを守ると約束したからということになりましょう。

こうなると、登録した選手の1人が、何か違反行為をした時には、きちんと処分しないといけません。

処分したり、しなかったりが時々でバラバラだと、安心して活動できませんので。

そのためにこういう行為は違反だよと事前告知をしておく必要があります。

例としてパデル協会ではこんな感じ。

【パデル協会倫理規程】
第1条 本規程は、一般社団法人日本パデル協会(以下「当協会」という。)の組織運営および諸事業の推進等に関わる全ての関係者が、当協会の社会的使命および役 割を自覚し、本協会の目的および事業執行の公正さに対する社会からの疑惑や不 信を招くような行為の防止を図り、もって、当協会及びパデル競技に対する社会 的な信頼を確保することを目的とする。

〔適用範囲〕
第2条 この規程における規律の対象となる個人は、基本規程第2条1項に規定する選手等とする。
2 この規程における規律の対象となる団体は、基本規程第2条1項に規定する団体とする。
3 第3条に規定する遵守事項に違反した個人または団体が、当該違反行為時に本条第1項各号または前項各号に該当するときには、懲罰時に同号に該当しなくと も、懲罰の対象とすることができる。

〔遵守事項〕
第3条 前条に定める個人および団体は、以下の事項を遵守しなければならない。
(1) 日本国内において有効な法令に反してはならない。
(2) 一般社団法人日本パデル協会(JPA)、国際パデル連盟(FIP)、スポー
ツ仲裁裁判所(CAS)、公益財団法人日本スポーツ仲裁機構(JSAA)、 国際オリンピック委員会(IOC)および日本オリンピック委員会(JOC) 等(以下纏めて「関連団体」という。)ならびに所属する団体の定款、規程、 規定、命令および指示等(以下「規程類」という。)に反してはならない。
(3) 暴力、暴言、ハラスメント、差別、ドーピングおよび八百⻑等の不適切な行 為ならびにスポーツのインテグリティまたはフェアプレーを著しく害する 行為を行ってはならない。
(4) 前条に定める個人および団体ならびに本協会にかかわる一切の者の名誉ま たは信用を棄損する行為をしてはならない。
(5) パデルに関し、不正な利益を供与し、申し込み、要求し、約束しおよびあっ せんする等してはならない。
(6) 補助金、助成金等に関して不正な経理処理および不正な申請、ならびに脱税 その他の経理に関わる不正な行為を行ってはならない。
(7) 社会の秩序に脅威を与える反社会的な勢力等と一切の関係を持ってはなら ない。
(8) その他、パデルに関し、直接または間接を問わず、品位を失うべき非行を行 ってはならない。

というわけで、みなさん、守ってね★

以上、スポーツ団体に処分される根拠は何だの話でした。

では、また。

記事をお読みいただきありがとうございます。弁護士は縁遠い存在と思われないよう、今後も地道に活動をしようと思いますので、ご支援よろしくお願いします。