テニス部に入部してから(練習内容が不合理?!)
こんにちは。弁護士の紙尾です。
さて、ラケットの購入ではひと悶着ありましたが、無事テニス部に入部できたAさん。
いよいよ、ボールを打って練習だ!と意気込んでいたその矢先でした。
「1年は、6月までボール拾いだ!」
顧問の先生から、こんなことを宣告されてしまいます。
なんでも、1年生が6月までボール拾いのみというのは、創部以来30年間の伝統だそうで、2年生も同じように経験して来たことなのだそうです。
同じ部活動に所属して、部費も同じく支払っているのに、自分たちだけボール拾いしかできないのはおかしいのではないか?
さて、この件を法律的に見てみるとどうなるでしょうか。
部活動は、課外活動とされているものの、部活動には顧問の教員が配置され、活動内容を決定したり、部員の安全に配慮したりしています。
そうだとすれば、顧問の教員が部の活動内容をある程度自由に決定できるとするのが自然です(これを法律的な用語にするとすれば、「裁量」といいます。)。したがって、原則としては、顧問が決定した活動内容について、部員はこれに従うべきであると考えられます。
もっとも、顧問と言えど、著しく不合理な活動内容を決定できるほどの権限まではありません。たとえば、部員の誰かが嘔吐するまで延々ランニングをさせるとか、失敗すればケガの危険がある階段からの飛び降りを練習と称して行うなどが挙げられます。
(どれだけその練習に効果があろうとも、部員の身体・生命よりも練習の効果の方が大きいということは考えにくいからです。)
では、今回のような「1年生はボール拾い」はどうでしょうか。
一見すると合理性がなさそうですよね。しかし、そう簡単にも行きません。
たとえば、Aさんの部活は、テニスコートが1面しかなく、練習時間も終業から、17時までの間、部員が全部で50名もいる。
しかも、2年生・3年生は最後の大会が6月にあり、その大会に出るメンバーを優先的に練習させなければならず、その代わり、6月を過ぎると3年生が引退して、コート利用に余裕が出る状況だったらどうでしょうか。
これはAさんが、2年生3年生になったときにも同じことだとすれば、この部活動で活動できる練習時間の総合計のうち、前半の一部分を先送りする分、2、3年生の一番脂がのっている時期に、最後の試合で結果を出すためにたくさん練習するための前借とも言えますよね。
このように、顧問の決定した練習内容が著しく不合理(与えられた「裁量」を逸脱している)かどうかは、具体的な事実関係をつぶさに拾い集めて考えるほかありません。
なので、万が一皆さんが練習内容の不合理で弁護士に相談したいと思うことがあれば、具体的な練習の状況、コート面数、練習時間、部員の数、試合への出場機会を3学年でどのように考えているか等の具体的な事実をたくさんお伝えくださいね!
以上、弁護士の紙尾でした。
記事をお読みいただきありがとうございます。弁護士は縁遠い存在と思われないよう、今後も地道に活動をしようと思いますので、ご支援よろしくお願いします。