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この絵はこの詩から生まれました ──詩の世界をアートに [第78回]


春行寄興 礒部晴樹・画


春行寄興        春行 興を寄す

宜陽城下草萋萋     宜陽(ぎよう)城下 草萋萋(せいせい)
澗水東流復向西          澗水 東に流れ また西に向かう
芳樹無人花自落     芳樹 人無く 花自づから落ち
春山一路鳥空啼     春山一路 鳥空しく啼く

李華


春の行楽 楽しさのままに

宜陽の町の外 若草が生い茂り
谷川の水 東に流れ また西に向かう
花の香ただよう樹 人影もなく花が散っている
春の山道 鳥の声だけ響いた


*本来は山水画、日本画がふさわしい古典の漢詩を、
現代風、モダンに描くという、
無謀な試みも数を重ねてだいぶ慣れてきました。
極力シンプルに、極力省く、というテーマで続けています。
日本のアートは省く、シンプル、が特徴だと思います。
俳句は、ぎりぎり最小の語でつくる詩ですし、
能は、無駄な所作を省いた末の洗練の舞踊です。
書では、白い余白の空間が美をつくりだしています。
現代のアート、美を求めて、
今しばらく、暗中模索の日々です。


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