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この絵はこの小説から生まれました ──小説の世界をアートに [第40回]


今回は詩ではなく、忘れられない小説から生まれた絵の話です。
その本はW.H.ハドソン作「緑の館」というロマンティックな小説です。

緑の館 礒部晴樹・画


W.H.ハドソンの小説「緑の館」とのファーストコンタクトは、
中学生のころ、少年向け月刊誌でした。
ストーリーのあらすじとさし絵のわずか数ページでしたが、
アマゾンのジャングルでの神秘的な少女との出会い、
というイメージが忘れられず、
のち高校生になって文庫本で読み返しました。
祖国の政治的混乱をさけて、熱帯の密林に逃げ込んだ若者は、
高い樹々の、重なる葉と葉の奥から聞こえてくる、
不思議な声に魅了されます。
猿の声でもなく、鳥たちのさえずりでもなく、姿は見えません。
それは原住民たちが、ディディの娘とよんでいる、
妖精のような娘であることがわかりました。
こうして若者アベルとこの娘リーマとの
密林のロマンスがはじまるのですが、
この物語冒頭の少女との出会いまでのシーンが印象的で、
私の絵のテーマとして、モチーフとして、
20代当時から70年近くたった今でも変わらず
私の絵心を揺さぶり続けています。




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