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この絵はこの詩から生まれました ──詩の世界をアートに [第80回]
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春江花月夜 張若虚
たいへん長い漢詩なので、
前半途中の一部のみの抜き書きです。
白雲一片去悠悠
青楓浦上不勝愁
誰家今夜扁舟子
何処相思明月楼
白い雲が ひとひら 流れ去る
青い楓の 入り江のほとりで 愁いに堪えかねる人
この夜 舟で旅する人は どこにいるのだろう
その旅人を想う人は
この明月の下 どこの高殿にいるのだろう
*「春江花月夜」は、春江の花、月の夜景とともに、
流麗甘美に流れゆく詩です。
小舟で旅する男と、その男を想う妻の想いを、
河のながれのように、綴っていきます。
音楽でいうと、ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番が
ぴったりでしょう。
美しいメロディーが時に壮大に、
またある時はひっそりとささやかに、
夜のしじまに甘く響きます。