作品の感想諸々と文学フリマと『白鴉』33号と34号と劇団タルオルムと『島のおっちゃん』とマダン劇と

 『白鴉』34号に掲載されている「メッツェンバウムは届けられた」について、感想がぼちぼち届いてきております。古井らじか氏のブログや、吉村萬壱氏のツイート。そしてさいきんtwitter上で再会した、mixi時代に東京でお世話になったかたのツイート。あのときはたしか新宿の「どん底」に連れて行ってもらいました。
 そして『後藤明生の夢──朝鮮引揚者の〈方法〉』(幻戯書房)の著者である東條慎生氏からは『吟醸掌篇』vol.4に掲載された「鳥の餌を盗む」のご感想をいただいております
 皆さま、大変ありがとうございます。励みになります。
 ちなみにいままで気づいていないかたもおられるかもしれませんが、このブログ、というかnote全体において文字に下線がついているものはすべてリンクが繋がっておりますので、そちらをご参照したりお楽しみいただいたりしてください。

 前回の記事でお知らせしたアイスコーヒー発行の『反省しない犬』vol.4ですが、どうやら9月の文学フリマ大阪の抽選に漏れたようで、アイスコーヒー自体の出店はないようです。しかしながら通販は予定しているようですし、ほかのブースでの委託販売の可能性もなくはないようですので、なにかわかり次第またお知らせします。ちなみに来年1月の文学フリマ京都での出店は確実にできるようです。「おいしいオレンジジュースの作りかた」はいつ皆さまのお目にかかれるのか。乞うご期待。

 13日、劇団タルオルム第20回本公演『島のおっちゃん』を観に行く。代表の金民樹氏にいつかご挨拶をと、先月26日に事前挨拶しておいたので、実行。承諾も得ておいたので、『白鴉』33、34号も持って行く。なぜ2冊、となるだろうが、33号に載せている「うまれるところ」とおなじく阪神教育闘争を題材にした作品『マダン劇 4.24の風』や『大阪環状線』を、書いているときに観ていたような気がしていたが、過去の記事を調べてみると気のせいだった。まあ、気のせいであろうと、『マダン劇 4.24の風』や『大阪環状線』の作者に読んでもらいたくなる気持ちはわかってほしい。去年にタルオルム初体験だった『キャンパー』や『風の声』、先の2作とおなじように、今作『島のおっちゃん』も、過去の出来事をどう描くか、それを現在書くということはどういうことかをしっかりと考え抜いた上で創作されているような感触があり、たいへんいい作品だった。冒頭の場面が過去の話であることをナレーションで伝えられ、場面転換でさらに過去へと遡る。そこからは時制通りに進むが、この時制によって混乱させられることはなく、作者の技量を感じさせられる(まあ、『風の声』をやりきったあとなんだからそこまで大変ではないのかなとも思うが)。なお、今回はマダン劇ということで、舞台のまわりを囲むようにして客席があり、演者が観客に絡むこともある。歌の場面、「アリラン」をうたう場面ではすくないばがら手拍子があり、私も参加したが、これは映画館における応援上映と似たようなものなのだろうか。まあ、映画は演者が画面から出てくることはないですが。ハンセン病患者であり在日朝鮮人である「おっちゃん」たちの受ける差別的な扱いが描かれる中、「善意」の持つちょっとした(しかし当事者には大きな)ずれもしっかり描かれ、私自身も気の引き締まる思いだった。
 さいきん話題の「頭ポンポン」も劇中に何度かあり、それとなくみんな跳ね除けていたのはさすが現代的。
 気になったのは小5のころにひとりで島へ行くことになったミンが島のおっちゃんのバイクに乗せてもらうところで、私の中に巣食うバイク警察が蠢くわけだが、手の動きからしてあれはギア付ではなくスクーターで、というかおっちゃんの手の指が全欠損していてそうでなくともスクーター以外にはありえないのでスクーターでしかなく、しかし小5とはいえあれだけ腕を上に伸ばす必要があるということは、スクーターではありえず、どちらかといえばギア付きのアメリカンタイプでないとおかしいのだが、そもそも指ないのにどうやってクラッチ操作できるのかということになり、とここまで書いてやっと私は、だったらスクーターでもどうやってあの人はブレーキをかけていたのかと気づいた。ここも実話をもとにしているとしたら、どうやってたのかお聞きしてみたいところであった。
 まあしかし、そんなことは気にならなくなるぐらいにいい作品なので、今回逃したかたは配信Blu-rayをどうぞ。年末には東京公演もあるらしいですが。
 なお、タルオルムは来年20周年を迎えるらしく、4月には『マダン劇 4.24の風』をまた観られるらしいので、楽しみ。


さいきん読み終えた本
金東椿『韓国現代史の深層──「反日種族主義」という虚構を衝く』(梨の木舎)
ヘルマン・ブロッホ『ウェルギリウスの死(上)』(あいんしゅりっと)

さいきん観た映画
『ホールドオーバーズ──置いてけぼりのホリディ』(アレクサンダー・ペイン)大阪ステーションシティシネマ
『マッドマックス──フュリオサ』(ジョージ・ミラー)大阪ステーションシティシネマ。2回目。
『WALK UP』(ホン・サンス)シネマート心斎橋
『密輸1970』(リュ・スンワン)MOVIXあまがさき

さいきん観た舞台
劇団タルオルム第20回本公演『島のおっちゃん』(ドーンセンター)


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藤本紘士
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