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赤ちゃんの頭が変形しているかも!?
こんにちは、ひろです!
現在、小児科医として働いており、日々精進中です!
病院で関わる方以外にも、多くの人に自分の記事を読んでいただきたいと思い始めました。
少しでも子育てに不安や迷いが生じている、そんな方に向けた記事を作っていきたいと思います!
さて、本題に入ります。
1か月健診の際に、よく保護者の方から下記のようなご質問を受けます。
「この子の頭の形は大丈夫ですか?」
このことに悩んでいる方は実際多いのはないのでしょうか。
この記事では
● 生後〜1歳までの赤ちゃん(乳児)に関する頭の凹みや変形
について、解説していきます!
1. 赤ちゃんの頭蓋骨の間には隙間がある
赤ちゃんは生まれた時から頭蓋骨の間には隙間が空いています。これには下記の理由が挙げられております。
・出生児に狭い産道を通過するため
・脳が急速に成長を遂げるのを妨げないようにするため
(生後6か月には生まれた時の約2倍の大きさになり、2歳時では生まれた時の約4倍の大きさになります)
また、生まれたばかりの赤ちゃんの頭を触れてみると、2つの穴が空いております。頭蓋骨の前側に開いている大きな穴を「大泉門」、後側に開いている小さな穴を「小泉門」と呼びます。これらの穴のすぐ下には大脳があり、強い衝撃や圧力をかけないようには注意すべきですが、頭を洗ったり触ったりすることに神経質になる必要はないです。「大泉門」の閉鎖時期は生後1〜2歳(平均1歳半)であり、「小泉門」の閉鎖時期は生後2〜3か月です。早産児であると閉鎖時期が遅くなる傾向があります。
2. 赤ちゃんの頭がペコペコしている
さきほど触れた「大泉門」や「小泉門」は通常わずかに凹んでおります。そして、心拍に合わせて拍動するため、ペコペコしていても問題はありません。
また、「大泉門」は膨らみや凹みを見て、病的と判断する場合もあります。これは他の症状と合わせて考慮していきます。「大泉門」の縁が触れてもわからない場合は、膨らんでいると判断でき、これは通常泣いている時にも見られます。ただし、嘔吐していたり、活気がない場合は髄膜炎といった重症感染症の可能性もありますので直ちに病院受診が必要になります。そして、いつもより凹んでいる場合に関しては、哺乳量や尿量が少なければ、脱水を疑います。この場合も病院受診が必要になります。
3. 赤ちゃんの頭が変形している
赤ちゃんの頭の変形については、2パターンあります。1つ目は、寝る時の向き癖で生じるような「位置的頭蓋変形」です。2つ目は、頭蓋骨の隙間が早い時期にくっついてしまう「頭蓋骨早期癒合症」です。
3-1. 「位置的頭蓋変形」について
まず、1つ目の「位置的頭蓋変形」について説明していきます。先ほど伝えたように、赤ちゃんの頭蓋骨には隙間が空いております。これにより、外からの力で容易に頭は変形してしまいます。赤ちゃんを仰向けで寝かすと、後頭部の片側だけ、あるいは後頭部全体が平らになったりと変形は少なからず発生します。赤ちゃんの頭の上から観察すると、平行四辺形の形に変形していることが多いです。「位置的頭蓋変形」は、赤ちゃんが寝返りをうったり、お座りをするなどの発達の過程で自然に良くなることが多いので積極的な治療は必要ないとされてきました。しかし、5歳くらいの子に1%の中等度〜重度の変形を認めることもあり、自然によくならない場合もあります。いつも同じ向きで寝ていると変形が進んでいくのです。これについては、予防が重要となります。
向き癖を治す方法として、3つあります。1つ目は、授乳時などの普段の横抱きを効き腕だけではなく、左右交互にやってみたり、縦抱きを取り入れてみることです。2つ目は、赤ちゃんは音や光に対して反応して、その方向を向くことを利用します。向き癖とは異なる位置を向くように、窓に対してベッドでの赤ちゃんの位置を変えてみたり、ベッドごと位置を変えてみることです。また、興味のあるおもちゃを向き癖のある逆側に置いておくことも有効です。3つ目は、「タミータイム(1日20〜30分程度)」といって、赤ちゃんが覚醒して保護者が見ている時にうつぶせの姿勢をとらせることです。左右対称性獲得のための基礎トレーニングになります。ただし、うつぶせ寝で放置することは、乳幼児突然死症候群を起こす可能性があるため、必ず保護者が見ている時にやりましょう。
そして、先天性斜頸(出生時に一方の首の筋肉だけが損傷を受けて、首の筋肉が収縮して頭がその方向を向いてしまう)など向き癖が生じてしまう病気がある場合は、まずその治療を優先するべきなので、小児整形外科など専門医を受診する必要があります。
頭の変形が重症な場合には、ヘルメット療法も存在します。日本でも徐々に認知されてきておりますが、保険適応外(最低40万円ほどの費用がかかる)であり、できる施設も限られております。
3-2. 「頭蓋骨早期癒合症」について
一般的に「位置的頭蓋変形」は平行四辺形の形をとるのに対して、「頭蓋骨早期癒合症」は前頭部が三角形であったり、縦方向に長細い楕円形などの形をとります。所見で区別できない場合は、頭のCT検査を行います。
「頭蓋骨早期癒合症」と診断された場合は、他合併症のない非症候群性と、顔面骨の発育異常や合指症(隣り合う指/趾の一部あるいは全部が癒合している状態)などを伴う症候群性とに分けられます。後者の場合は、背景疾患や他の合併症の検索が必要になります。
いずれの場合も、脳の成長に合わせて、頭蓋骨が変形できないため、頭蓋内圧が上昇していきます。進行すると、精神運動発達遅滞や視機能障害などを残す可能性があります。早期に専門医を受診する必要があり、経過観察で良い場合もありますが、場合によっては癒合している部分の切除術や頭蓋・顔面の形状補正を行います。