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日本の森や海の豊かさについて少し深掘ってみる①

こんにちは。前回SDGsの14番「海の豊かさを守ろう」と15番「陸の豊かさを守ろう」について観光面の経済性について考えてみましたが、今回はその「豊かさ」って何だ?という点について日本の事情を書いてみたいと思います。

日本の海や森は世界屈指だった!

まずは基本情報、海から。日本は言うまでもなく島国で海岸線の総延長は世界で6位です。アメリカやオーストラリアより長いのは驚きです。水産資源にフォーカスしてみると日本近海では3800種ほどの魚が獲れ、世界有数だそうです。海岸線が入り組んだり、暖流と寒流があるといった自然条件から、漁業や養殖が盛んでよく魚を食べるといった産業面や文化面でも日本の海の幸は豊かと感じてる人は多いのではないでしょうか。

次は森です。日本の森林率は68.5%、世界の先進国では3位であり森林大国と言えます。この数字を知った時ににわかには信じられませんでした。国土の7割が森だなんて。。でもGoogleマップの衛星写真で日本列島を見れば実感できるのではないでしょうか。日本は実は緑一色です。

広大な人工林が海に及ぼす影響

しかし日本の森林が危機に瀕している、と言うと大げさですが、問題を抱えてそうなニュアンスを聞いたことがある人も多いと思います。日本の広大な森林の約4割は戦後に植えられたスギやヒノキなどの針葉樹人工林です。それが林業の衰退によって手入れが行き届かず荒れてきたことで様々な弊害が起き、海の豊かさにも影響を及ぼしてるという話です。(林業衰退については別の機会に)

日本の原生林のほとんどは混合林、つまり針葉樹や広葉樹が混ざった森でした。広葉樹は秋に葉を落とし、それが堆積して微生物に分解され腐葉土となります。そこにフルボ酸という成分が発生し、鉄分と結合し、雨によって川に浸み出してから海に流れでます。この森の栄養がプランクトンを育て、そこに小魚がきて大型魚が集まる、という生態系があるのです。にも関わらず燃料として広葉樹は切られ、当時不足していた建材などのために針葉樹がこれだけ増えてしまったのです。しかしこの生態系のメカニズムは最近になってわかったことで、高度成長期に「この不漁は何かおかしい」と感じていた漁業関係者が多かったそうです。

ある時、気仙沼で牡蠣の養殖をしていた漁師がこれに気づき、山に植林するようになったら状況が改善しました。このことをきっかけに「森は海の恋人」という活動が広がり、今でも全国で漁業組合等が植樹活動をするようになったということです。富山湾に流れこむ川の上流にある飛騨で広葉樹を植えたらブリが戻ってきて氷見でブランド化した話も聞いたことがあります。森、川、海はつながった生態系ということですね。

いにしえの「魚つき林」とは

森と海のつながりについてもう一つ触れたいのが「魚つき林」です。耳慣れないかもしれませんが「うおつきりん」と読みます。古くは江戸時代から「お林」などとも呼ばれ、海の漁場を保つために近くにある森を大切に保全していたということです。森と海はつながってるって昔の人はとっくに知ってたんですね、そのサスティナビリティ感には脱帽です。。

現在は森林法によって「魚付き保安林」として保護の対象になっています。が、しかし若干問題も。保安林は全部で11種類あり、総面積は国土の約3割にものぼります。一番大きいのは水源地の森である「水源かんよう林」で7割、ところが魚付き保安林はたった0.5%しかありません。土地所有の問題もありますが、まだ魚付き林効果の科学的な根拠が不十分で認められてないとも聞いたことがあります。いやはや。。

その全国で数少ない魚付き林が神奈川県真鶴町にあります。私も二度足を運びましたが、その森に入ると本当に圧倒されます。混合林ですが、特に広葉樹は幹が太く、ぐにゃぐにゃとうねった巨木ばかりで恐ろしささえ感じるほどです。白神山地や屋久島とは違った迫力が味わえます。ちなみに水源かんよう林で日本最大は東京の水瓶と言われる山梨県小菅村一体です。こちらも何度か訪れましたが、素晴らしい森が広がってます。

まとめると、日本はもともと森も海も豊かで、日本人は古くからその豊かさを維持する必要性を知っていたということです。それがおそらく高度成長期の開発のうねりの中で忘れられてしまったようです。

つづく。

※TOP画像は真鶴の魚付き林に立つ巨木です


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