見出し画像

英語奮闘記:「Oh my God」と神学の戦い

年寄りの独り言として聞いていただきたい。もうかれこれ40年近く前の事だ。

ロンドンでインターナショナルスクールに通い始めて1年ほどした15歳の頃。月に一度の贅沢として、同級生と一緒に学校の最寄りのマクドナルドに出かけた。

寒い冬だったが、たしか全員が冷たいミルクシェイクを注文していた。

寒い日にミルクシェイクを入れたカップをもてば当然冷たい。

筆者が「Oh my god, My hands are freezing!」と一言言った時、通りすがりの大人から肘をつかまれこういわれた。黒人の人だった。

「お前、見た所クリスチャンでもないのになんでOh my Godなんていうんだよ」

何が起きているのか分からなかくて筆者がぽかんとしていると、今度は中東出身の人が入り込んできて言った。

「見た所モスレムでも無いのに神の名をかたるのか?Outrageous!」とう。

日本人にはクリスチャンもいるのに、なんでこんなことを言われるのだろう。

無為な喧嘩はごめんだったのでその場を離れようとしたが、大人たちは引き続き神学についての議論をぶち任していた。

「Godはクリスチャンの神だ。なぜモスレムのあんたが出しゃばってくるんだ」
「確かにモスレムはAlahというが、これはキリスト教のGodと同じだ。Gabrielがコーラーンをモハメッドに伝えたのを知らないのか?」

その頃通っていた学校にはイスラム教徒の友達が多く、イスラム教を伝えたのはキリスト教徒同じ天使だと言う知識はあった。しかし、昼休憩は短い。こんな大人の騒ぎに付き合っている暇は無いので、急いで学校を目指した。

筆者はそこで考えた。「仏様」の事は英語で{Lord Buddha}という。そして、Oh my Godとほぼ同じ意味で、「Oh my Lord」という表現があることも聞いた事があった。それでは「Oh my God」の代わりに「Oh my Lord」と言えば良いのではないか。

ここで言うLordは、キリスト教で「主よ」という事になる。ちょっと大げさな言い方になるが、万が一宗教論争になっても「仏陀はLord Buddhaです」と答えられると思った。

数週間たってまたマクドナルドに行った時、オーダーしたチキンナゲットがあまりに熱くて、「Oh my lord, it’s too hot!」と言った。

途端に周囲の大人たちがこちらを向いた。

まず目に入って来たのは白人の二人の若いカップルだった。女性はこちらに歯を向きながらものすごい顔で睨みつけている。一緒に居た男性は「Just let her say whatever she wants to say」と言っていた。

しかし周囲は黙っていなかった。前回と同じような議論が始まる。

「なぜクリスチャンでないお前がOh my Lordなどと言うんだ」
「異教徒なのになぜ主の名を語るんだ」

これにイスラム教徒も加わって、同じことを言われる
「見た目からしてイスラム教徒でないお前がなぜLordなどという言葉を使うんだ」

筆者はこれに答えた。

「仏様がLord Buddhaだからです。何もおかしいことないでしょ?」

大人たちは一瞬ぽかんとした。

しかし、すぐそばにいたインド系と思われる男性が間髪入れずにこう言った。

「お前が信じるのは小乗仏教か、大乗仏教か」

筆者は出家はしていないので、「大乗仏教です」と答えた。

するとその男性は「大乗仏教はCheatだ。出家しにないのに成仏できると考えている」

そして、その場にいたクリスチャンとイスラム教徒と仏教徒の間に弁舌戦の火ぶたが切って落とされた。

曰く、仏陀は人間であり、神の様な人知を超えた存在ではない。人間のまま悟りを開いたなどと言っているが、結局は人間のままだったじゃないか。これはキリスト教のGodやAllahなどとは同等とみなされない。

大人の神学論に巻き込まれたくなかった筆者は、チキンナゲットが冷める前にその場からこっそり抜け出した。

Oh my godもOh my lordも駄目となると同言えば良いのか。

それ以外にもGood lordなどといった表現を聞いていた筆者は、「Lord」を使う表現に呼出してしまった。少なくとも仏陀と関係する言葉なので、道中で言ったとしても説明する事が出来ると思っていたからだ。

しかしその頃、同級生が言っていた、「Oh, Gosh」という言葉が耳に残った。GoshはGodの少し婉曲的な表現で、これならおそらく言っても周囲が怒りを爆発させることは無いだろうと。

そこから、筆者は言うとしても「Oh my lord」か「Oh, Gosh」の二つに絞った。

気の置けないよく知っている友人は「Oh my god」を許してくれていたが、クリスチャンの人やイスラム教徒の人達は、なぜ筆者が「Oh my god」を使っているか不思議に思っていたに違いない。

しかし、あるとき「Oh my lord!」と言った時も、「Do you say that?」とつこまれることがあった。「Lord(主)」という響きが変に感じたのだと思う。

その時は一応「仏様はLord Buddhaだから」と説明しなければならなく、周囲の人が腹を立てる事になりかねないという事も分かっていると説明した。

今、ネットを叩けば、Oh my Gooは、日本人の様なクリスチャンやイスラム教ではない外国人が避けた方が良い言葉のトップとして出て来る。それに引き換え、現在の日本の小学生たちのなかで「Oh my god」を普通に使っている子を見かける。

今の現代のロンドンでこんな会話が交わされるのかは皆目不明だが、とかくキリスト教徒以外が言う「Oh my god」がこんなにも反発を食らうとは思わなかった。

言うなら、婉曲表現の「Gosh」もしくは「Oh my goodness」位にしておくのが良いのかもしれない。



Noteでのこれまでの連載をAmazonにまとめています。
ご興味があられましたらぜひ下記リンクを覗いてみてください。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集