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Mobilityの行きつく先


水素自動車の普及と水素ステーションの普及、卵か鶏かの議論は常にあるのですが、今回は「卵・鶏」の話はしません。水素自動車の「行きつく先」の話をします。

燃料電池自動車と電気自動車

車に載っているタンクの水素と空気中の酸素が、燃料電池に入ると電気が出来ます。その電気で動いている自動車を燃料電池自動車(Fuel Cell Vehicole:略称FCV)と言います。電気をつくりながら走行する電気自動車とも言えます。車に載っているバッテリーに充電された電気で動く自動車を電気自動車(Electric Vehicle:略称EV)と言います。ついでに言うなら、充電された電気が無くなったら、ガソリン車として動くものをプラグインハイブリッド車(Plug in Hybid Vehicle:略称PHV)と言います。

現在、販売しているFCVは、トヨタ自動車のMIRAI、CROWN、そしてHYUNDAI自動車のNEXOです。BMWは昨年の東京モーターショーに出展していましたが、販売はしていません。HONDAが近々販売する予定になっているCR-Vという車もがあります。いずれにしても、まだまだ車種が少ないのが現実です。

水素エンジン自動車

一方で、水素は燃えるので、燃焼させてエンジンを駆動させ、走らせる水素エンジン自動車というものもあります。トヨタ自動車が昨今、レースで実証試験をしています。これまでのエンジンの技術を使えるので、自動車部品のサプライヤーの延命に繋がることになります。

実は、この水素エンジン自動車は、過去にも研究されており、当時は燃料電池自動車の方がMobilityとして優れているという事になり、燃料電池自動車が市場導入されたという歴史があります。

電気と燃料電池の合体した自動車

そして、FCVとEVの良いところを合体した自動車があるのですが・・・・

IPHE 仏グルノーブル 2015年12月3日:中央にいるのは筆者

2015年12月、IPHE国際水素会議において、与党の水素政策責任者としてスピーチをする為、仏国グルノーブルに訪問したことがあります。グルノーブルは、日本で言えば筑波学園都市のような所です。冬になると多くの人が着る「Mon cler(モンクレール)」は、グルノーブルの郊外に位置するMonestier-de-Clermontで創業されて頭文字をとって「Mon cler」と名付けられたそうです。会議に参加するだけでなく、水素に関わる官民の研究機関に視察に行き、意見交換をしてきました。

FCVの水素充填口

仏国原子力・代替エネルギー庁先端技術局代替エネルギー・ナノ材料技術研究所(CEA TECH LITEN)の輸送機用蓄電池・燃料電池事業部長と燃料電池について、議論した際に「EV(蓄電池)に、LITENで開発した燃料電池を取り付けて、EV&FCVエクステンダー自動車に改造しているベンチャーがある」と聞いたのです。「見に行きたいの是非、紹介して欲しい」と依頼すると「OK」と連絡を取ってくれたのです。それがSymbio社でした。今では、ミシュラン社の下、仏国フォルシオ社と合弁会社をつくり、燃料電池製造会社となっています。

Renaul社カングー

当時、Symbio社では、フランス郵便で使用されていたRunaul社カングーをEV&FCVのエクステンダーに改造していたのです。通常はプラグインで充電した電気を使って走行する。電気が無くなると燃料電池が稼働し、電気をつくる。正に電気と燃料電池の合体した自動車だったのです。それを見た時に身震いしたのです。これが、環境性能車としての究極かもしれないと・・。

一般的な家庭のライフスタイルを想像してみると、平日、走行する範囲は、スーパーで買い物をする、子供の送り迎えをする、趣味のお稽古をする、走行距離は日に30㎞も無いくらいです。この距離であれば、蓄電された電気、つまりEVで充分まかなえる。週末に、家族で出かけるとしても片道150㎞くらい、往復で300㎞くらい、この時は燃料電池を稼働する必要があります。週末に近所で過ごせば、燃料電池は使いません。結果的に水素ステーションに行く機会が減るという事になります。

水素ステーション経営者には嬉しくない事ですが、車のユーザーにとっては嬉しいことです。EVの心配は、いつ電気が無くなるか心配な事。高速充電と言っても、誰か先に充電していたら2倍の時間を有します。FCVの心配は水素ステーションが近所に無いため、充填しに行く手間がかかるという事です。つまり、EV&FCVの合体モデルは、利便性が高い究極の環境性能自動車ということになるのです。

欧州風力発電

EV&FCV合体モデルの自動車の発売

何時、このEV&FCV合体モデルの自動車が、新車として販売されるのかと待っていたのですが、遂に2020年秋、ルノーではなくメルセデスベンツが世界で初めて販売したのです。それがGLC-Fcellです。

当時、日本で販売(4年リース)されたのは28台、その内の1台は私の家にあります。通常の使い方は、EV走行で充分であり、水素を使う事は、ほぼありません。自宅に帰り、充電器に繋ぐと朝には充電は終わっています。水素ステーションに行く回数は減り、水素ステーションが少ないというデメリットを感じなくなりました。

唯一の欠点はMIRAIと異なり、電気を給電する仕組みがないことです。つまり、このベンツではコンサートのサポートは出来ないという事になります。

Mobilityの行きつく先は

実は、近いうちに販売されるHOHDAのCR-Vは、EV&FCVの合体モデルであると同時に給電機能もついているので、行きつく最後のMobilityだと思います。

EV走行で60KM、FCVで600KM走行可能ということです。環境機能という意味でのMobilityとしては行き着きましたが、QOLを引き上げるという意味では、到達していない部分があります。

それは、車載オーディオに燃料電池で作られた電気を使って音質の優れたサウンドを提供する事。そして、車内で水素を吸えて運転中の疲れを取り除く機能を有する事。この2点です。水素の特徴を生かす方法は、Mobilityだけではないのです。水素は地球温暖化を防ぐエネルギーであると同時にQOLを引き上げるエネルギーであることも忘れてはいけません。

H2&DXは、水素を5感に伝えるサービスを提供する会社として、今後とも社会に貢献していきます。

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株式会社H2&DX社会研究所代表取締役
福田峰之
株式会社H2&DX公式サイト

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