第一回福島チャンピオンズリーグ’24上位24名 ハール選手(ドラパルトex・リザードンex)vsえす選手(種ポケモンロストゾーン軸)
決勝一回戦 ハール選手vsえす選手
福島チャンピオンズリーグ、通称「福ちゃん」。
近年は全国各地において、有志によるポケモンカードの自主大会が盛んに行われている。今でもプレイヤー人口の増加が続くポケモンカードにおいて、もしかしたら自主大会では歴史の長い方に分類されるかもしれない。感染症流行による休止期間を挟みつつも5年前から開催されている、「年間での積み重ね」を取り入れている大会となっている。
福ちゃんは年に複数回が行われ、そこで入賞した順位に応じて得たポイントによって年間最優秀選手を決める総決算のグランドファイナル大会まで繋がる、腕試しとしてもってこいの場所だろう。また、驚くべきことに“腕試し”だけに留まらず、主催を始めとした運営チームと参加者の人柄も合わさって交流会のような和やかさも持ち合わせており、参加者全員がポケモンカードを楽しむ、そんな空気が感じられる。
世界大会出場まで繋がっていく公式の「シティリーグ」の積み重ねと同様の、年間でのポイントレース。24年度の第1回として行われた今回は148名の選手が集まった。朝早くから始まった6回戦に亘る予選を終えて時刻は午後3時を回った頃、決勝ラウンドへ進出する上位24名が決定する。
決勝ラウンドはトーナメント、シングルエリミネーションで進行するが、本大会では予選通過上位8名に1回戦のシードが与えられ、9位から24位までの16人がトーナメント最初の戦いを行う。このタイミングで戦っている者達は、頂までさらに5戦、勝ち続けなければならない。
あと一歩でシードをつかみ損ねた9位のハール選手と、決勝トーナメントへぎりぎり滑り込んだ24位のえす選手。予選の順位に差はあれ、ここからは同じ「負けたら終わり」の一発勝負。
より一層気のかかる決勝ラウンドが、始まった。
お互いにバトル場を公開し、先攻のえす選手はキュワワー、後攻のハール選手はビッパ。共にHP70の種ポケモンでゲームがスタート。
先攻1ターン目
えす選手のデッキは、一度カードを送りこむと取り戻すことのできない失われた場所「ロストゾーン」へカードを溜め、枚数が一定のところまで到達すると使用可能になる強力な効果を利用するデッキタイプだ。
グッズ「ミラージュゲート」は山札から2枚のエネルギーを場のポケモンにつけることができ、ヤミラミのワザ「ロストマイン」は超エネルギーたったの1個で相手の場に12個のダメカンを好きなように置くことができる。
ベンチにかがやくゲッコウガを登場させて特性「かくしふだ」でエネルギーをトラッシュして新しいカードを手札に加えた後に、キュワワーの特性「はなえらび」でロストゾーンへの蓄積を開始する。山札の上から見た2枚のカードを、手札とロストゾーンへ1枚ずつ加えていく効果であり、ロストゾーン軸のデッキの根幹でもある。
もう1体のキュワワーをベンチに追加して「いれかえカート」でキュワワーが入れ替わり、まだ特性を使っていない方のキュワワーがこちらも「はなえらび」。2枚の中から選択を行うため、捲れ方によっては失いたくないカードが重なる場合もあるが、その場合でも選ばなければならない。ロストゾーンに「ミラージュゲート」を含めた2枚のカードを溜めてえす選手のターンは終了する。
後攻1ターン目
後攻のハール選手はベンチにドラメシヤを置き、そこに炎エネルギーも与える。続いてサポート「ナンジャモ」を使用。サポートはターンに1枚しか使用できない強力なトレーナーカードで、先攻の1ターン目には使用できないルールになっている。「ナンジャモ」の効果により両者は現在の手札をデッキの下に送り、新しく手札として自分のサイドの枚数分のカードを引くことになる。序盤は十分な枚数のカードを手に入れるドローソースとして使用でき、サイドの少なくなったゲームの終盤では相手の手札を減らして妨害を行うことができる、ポケモンカードの歴史においても近しい効果が以前に何度も登場している強力な効果だ。
新しい6枚の手札からハール選手は更にベンチポケモンとしてヒトカゲとロトムVを追加。スリーブもプレイマットも揃えており、リザードンが大好きだと試合前に話してくれていたハール選手、それでも使用しているのはドラパルトのデッキ…と思ったらちゃんといたリザードン。彼の愛情にも信念にも感じられるものがそこにはあった。
ロトムVの特性「そくせきじゅうでん」を使用してカードを3枚引き、ポケモン達の進化を目指していく。「そくせきじゅうでん」は使用した後にターンが終了する効果も持っているため、ここでハール選手の第1ターンは終わる。
先攻2ターン目
が、続くターンにいきなりギアの入るえす選手。
先攻は2ターン目に入って使用可能になったサポート、「アクロマの実験」で手札を3枚、ロストゾーンを2枚増やし、更にキュワワーがそこへ1枚ずつカードを追加する。
続けてかがやくゲッコウガの「かくしふだ」でドローを進めて、グッズ「ネストボール」から登場したのはウッウ。特性「ロストプロバイド」によってロストゾーンにカードが4枚以上あればエネルギー不要でワザを使うことができ、110ダメージを出す「おとぼけスピット」を持っている。既にロストゾーンにカードは5枚あり、ハール選手のバトル場のビッパ危うしと思われたが。
「「森の封印石」を付けます。そして「ロストスイーパー」で封印石をロストします。」
「ロストスイーパー」は手札から1枚のカードを使用コストとしてロストすることによって、場のポケモンのどうぐかスタジアムをロストゾーンに送る効果を持つが、自分のカードを対象にすることで一度にロストゾーンを2枚溜めることが可能でもある。「すごいつりざお」による水エネルギーの山札への回収も挿みつつ、流れるカードの連鎖でロストゾーンにカードを送り続け、なんと一気に7枚まで溜めてしまった。そして、7枚ということは。
グッズ「ミラージュゲート」
山札から2枚のエネルギーが飛び出し、手札からつけたエネルギーも含めて3枚のエネルギーを揃えて攻撃準備が完了する。ワザを使うポケモンは…トレーナーズの補助によってバトル場に忍びよっていたゲッコウガ。既に強力な特性を持ち、倒されてもサイドを1枚しか取られないたねポケモンでありながら、相手の場のポケモン2体に90ダメージを飛ばすワザ「げっこうしゅりけん」を持っており、相手によっては場を壊滅に追い込むことも容易だ。エネルギーを2枚トラッシュして放たれたその攻撃が急所を打ち抜く。ハール選手のデッキの根幹をなす、ドラパルトとリザードンになるはずだった2匹のたねポケモンがいきなり「きぜつ」させられてしまう。
後攻2ターン目
ドラメシヤもヒトカゲも失い、前のターンの動きをなかったことにされたも同然のハール選手は再度盤面を構築にかかる。手札からドラメシヤを出し、「ネストボール」からはヒトカゲ。続いてサポート「ペパー」でポケモンの進化を誘発させるワザ「エヴォリューション」が記録されているワザマシンと「なかよしポフィン」を手に入れ、そこからドラメシヤが2体顔を覗かせる。
ドラメシヤ3体とヒトカゲ、ロトムVの5体でベンチが埋まった。反撃は次のターン。
いや、えす選手のバトル場には黒いゲッコウガが残っている。このままでは前のターンに甚大な被害をもたらした脅威が次のターンも襲ってくるだろう。ハール選手はこのターンのベンチポケモンを並べる行動でグッズ「ネストボール」「なかよしポフィン」を使っている。それは山札から好きなたねポケモンを持って来られたにも関わらず、ドラメシヤとヒトカゲを選択したということだ。
…いないのだ。ゲッコウガの脅威を凌ぐには不可欠なポケモン、マナフィが。
特性の「なみのヴェール」が働いていれば、自分のベンチポケモンは相手からのワザのダメージを受けなくなり、「げっこうしゅりけん」での被害を防ぐことができるのだが…。この盤面の展開の意図、その真意はハール選手にしか知りえないとはいえ、対面するえす選手も当然予想できる。
欲しいカードがサイドに埋まってしまい使うことのできない、いわゆる「サイド落ち」というものだ。サイドにある6枚のカードすべてを取得することがゲームの勝利手段でもあるが、そこの6枚に含まれてしまったカードは相手のポケモンをきぜつさせるか、わずかに存在するサイドに直接触れる効果を持つカードを使うしか手に入れる方法はなく、ゲームの序盤に回収するのは難しい。
蒼海の王子の不在は致命的だが、試合をやり直すことはできない。次の攻撃が来ないことを祈って展開を行うしかないのだ。バトル場のビッパへ「ルミナスエネルギー」と「ワザマシンエヴォリューション」を付け、ベンチのドラメシヤ2体がドロンチへ進化を迎える。少しばかり大きくなったその姿は頭に自分のかつての姿ドラメシヤを乗せており、ドラメシヤと一緒に戦い、世話もするという生態だ。
ドロンチは特性「ていさつしれい」の効果によって山札の上から見た2枚のカードの内1枚を選んで手札に加えることができ、中間の進化であるが自分の動きを補助する役割も持っている。中間の進化も強みを持っているというのは進化ポケモンのデッキにおいては非常に大きく、ドラパルトexデッキの優れている点の一つであろう。ドロンチがドラメシヤへ指令を出すことは叶うのか。
先攻3ターン目
えす選手はヤミラミをベンチに加え、ハール選手を絶望へ叩き落す「ミラージュゲート」。
ヤミラミに超エネルギーが、そしてゲッコウガへ水エネルギーが付き、手札からは雷エネルギーを出して再び「げっこうしゅりけん」の準備が完了してしまう。サイドを取ることで後のターンだと更に自分の手札枚数が減ってしまう「ナンジャモ」を有効な今の内に使用しておき、そして再びゲッコウガが牙をむく。ヒトカゲとドロンチが倒れ、またしてもサイド2枚抜き。えす選手の残りサイドはもう2枚だけだ。
後攻3ターン目
生き残った片割れのドロンチが「ていさつしれい」を出して手札を増やすも、こうも立て続けに場を荒らされては苦しいハール選手。「すごいつりざお」で倒されたヒトカゲとドラメシヤを山札へ戻し、「なかよしポフィン」でヒトカゲを呼び戻すが、なんとここから追加の動きが難しい内容の手札のようだ。枚数自体は潤沢に見えても、その内容が噛み合わず動けない。カードゲームではこういうことも起こり得るが、ここで起こってしまうのか。「ボスの指令」でかがやくゲッコウガを“バトル場から追いやり”、再びバトル場に戻るためのコストを要求して3度目の正直…抵抗を図る。
先攻4ターン目
だが、えす選手の勢いは止まらなかった。すぐさま「ポケモンいれかえ」「いれかえカート」を駆使してキュワワー達がカードを探し続け、突如現れたライコウVが持ち合わせた「森の封印石」が対戦中に1度しか使えない強力な効果Vstarパワー、「スターアルケミー」によってカードを掴み取る。使用した「すごいつりざお」は、倒されたポケモンを回収しているハール選手とは対照的に、次の攻めに必要なエネルギーを山に返してく。両者同じカードを使用しているが、その使い方はゲームの流れを現しているかのようであった。そして決着の時。
「ミラージュゲート」
「いれかえカート」
「げっこうしゅりけん」
2匹のヒトカゲが打ち抜かれ、えす選手が3ターン連続のサイド2枚取り。
先攻4ターン目にしてサイド6枚すべてを取り切り、この試合の勝者はえす選手に決定した。
決着がついたことでお互いにカードを片付け、60枚の一束に戻していく。
ハール選手が触れなかった6枚のサイドを見てみると…そこにはやはりマナフィの姿が。
マナフィがいればかがやくゲッコウガに怒涛の勢いでポケモンが倒されることは無く、ゲームの流れはまた違ったものになっていたかもしれない。仕方ない、と笑ってみせるも悔しさを滲ませるハール選手だが、山形県よりここ福島県郡山市まで参戦した彼のその熱意、実力を後押しするため積み重なる経験がまた、次の日の勝利に繋がっていくだろう。相棒であるリザードンや一緒に戦ったポケモン達を労いながら、第1回福島チャンピオンズリーグの舞台からリタイアした
そして怒涛の勢いで相手を圧倒し次の試合へ駒を進めたえす選手。本大会の決勝ラウンドでは24位からの再スタートになったが、過去の福ちゃんでは何度も上位入賞を経験し、実力は裏打ちされている。今の試合で見せた勢いをキープし、頂まで上り詰めることはできるのか。戦いは続く。