第一回福島チャンピオンズリーグ’24ベスト16 たる選手(カビゴン)vsはると選手(サーナイトex)
たる選手vsはると選手
決勝ラウンド2回戦。ここからは予選を上位で突破した8名が参戦し、生き残りをかけた戦いが加速する。登場するのは見事予選を6戦全勝で勝ち抜いたたる選手と、登録名からも絶対に先攻を取ると意気込むはると選手だ。上位通過による決勝ラウンドのシードで休憩を挟んだ予選1位通過のたる選手に対し、シードが無かったとはいえ、逆に1勝し勢いをつけているとも考えられるはると選手、直前の行動は異なっている両者だが、互いに口からは緊張していると漏らしており、目の前に座る“ポケモンカードを楽しむ仲間“と緩やかな会話を交わしている。
予選でのニアミスは無かったのか、両者相手が使用しているデッキは知らないようだが、お互いのデッキを保護しているデッキシールドは共にリザードンが描かれているものであり、嵐が吹き荒れる中でレックウザとの攻防を繰り広げる姿と、テラスタルによって悪タイプに変化した姿が見られる。これはリザードンexデッキ同士の戦い、鏡のようだということで呼ばれている「ミラーマッチ」か、と冗談も挟みながら両者は対戦前にリラックスし…真剣勝負へ向けてスイッチを入れる。
2回戦、バトルスタート!
裏になっていたバトルポケモンをオープンすると、ヒトカゲ同士の対面…とはならず、クレッフィとロトムVが登場。この時点ではデッキの中身はまだ見えてこないものの、たる選手のロトムVの「そくせきじゅうでん」を止めることができる特性、「いたずらロック」を持つクレッフィはしばらくバトル場に居座りそうであるが、はると選手はどのような選択をしていくのか。
先攻1ターン目
先攻のはると選手はスタジアム「ボウルタウン」から。ラルトスをベンチに登場させつつ超エネルギーを付ける静かな立ち上がりで第1ターンを終える。
後攻1ターン目
対する後攻のたる選手は、早速相手の「ボウルタウン」を利用。じっくりと山札の中身を確認しゲームのプランを練る。何か重要なカードが見当たらないのか、かなり悩ましい様子を見せつつも、出てきたポケモンは…カビゴン。
予選を全勝で勝ち抜いたたる選手が使用しているデッキはカビゴンだ。
自らは攻撃せず、相手のリソース切れを狙うデッキであるため最低限の動きでターンを返すかと思われたが、拡張パック「変幻の仮面」より手に入れたグッズ「おはやし笛」を使用。相手の山札の上から5枚のカードをめくり、そこにいるたねポケモンをベンチにおびき出すことができる。これによりワザの使えないサポート用のポケモンが出てきてしまうと、バトル場に呼び出されてカビゴンの特性「とおせんぼ」による逃げる封じによって“詰み”を狙われてしまう。めくれた5枚の中にはラルトスがいたが、たる選手はこれを“ハズレ“としてベンチにポケモンは登場させずカードの効果を終えた。
…“1枚目の”。
たる選手はまだターンを終えず、手札からカードを出して動き続ける。サポート「ペパー」から、2枚目の「おはやし笛」とポケモンのどうぐ「森の封印石」を手札に加え、2回目の5枚めくり。これもラルトスが顔を覗かせるだけに留まったが、ロトムが不思議な石の力によってクレッフィの睨みにもひるまず山札から1枚のカードを呼び込む。
それは3枚目の「おはやし笛」!
・・・
対象、なし。
たる選手からすればハズレを3回も重ねたというか、対するはると選手からすれば助かったというか。この結果に両者それぞれ逆の感情を下敷きにした笑みを見せる。たる選手は「ネストボール」で2体目のカビゴンを自分のベンチに並べてターンを返す。
はると選手のサーナイトexによるトラッシュの超エネルギーを利用するデッキと、たる選手のカビゴンを主軸した相手の動きを縛り上げる妨害に長けたデッキ。お互いの自己紹介を済ませた1ターン目だったが、その動きの量はかなり対照的であった。
先攻2ターン目
相手がカビゴンのデッキだと知ったはると選手は、いつものものとは異なる、“それ用”の盤面の構築にかかる。こちらも「ペパー」を経由して手に入れた「なかよしポフィン」により、ラルトス達が“今度こそ”ベンチに登場。「ボウルタウン」から吹いてきた風に乗ってフワンテもベンチに流れ着き、場にポケモンが揃っていく。ワザマシンでクレッフィがポケモンを進化させる「エヴォリューション」を使用するが、2体まで進化できるにもかかわらず進化させるのはラルトス1体のみ。
カビゴンの「とおせんぼ」に対して、ラルトスはワザ「テレポートブレイク」によりベンチに下がることができる。カビゴン相手ではいかにワザを使える、アタッカーとなるポケモンで攻め続けられるかが大事であり、理想を言えば自分の場のポケモンすべてがアタッカーとなりうる状況が望ましい。
だが、デッキに入っているエネルギーの枚数も限られているため、仮に場に出ているすべてのポケモンがアタッカーになれる能力だとしても、全員がワザを使って攻撃できる状況は稀である。カビゴンデッキ側もそう自由自在に相手のベンチを呼び出し続けることができるわけでもないだろうが、ゲームの序盤ではカビゴン側にまだその手段が大量に残っているため、ここは警戒して“呼ばれても逃げられる“ラルトスのままであることを選択。相手からの攻撃が飛んでくることもそうそうないため、デッキのメインのサーナイトexを目指すラルトス…今は進化してキルリアは1体のみで十分だ。
後攻2ターン目
たる選手は「ポケギア3.0」でサポートを探す。はると選手の手札の枚数が4枚であることの確認を挟みつつ、7枚の中から見つかった「ペパー」が更なる2枚のカードに変換される。「ハンディサーキュレーター」という相手のワザのダメージを受ける度に相手のエネルギーをベンチへ押し流す、堅実な妨害効果を持ったポケモンのどうぐと、4枚目の「おはやし笛」だ。
最後の笛の音色に呼び込まれたのは通常の個体とは違い、黒色にかがやくゲッコウガ。様々なデッキに採用され、特性「かくしふだ」で手札をサポートする強力なポケモンだが、水エネルギーの入っていないサーナイトexのデッキにおいてはアタッカーとしての役割はない。そう、「おはやし笛」の“アタリ”である。
先攻3ターン目
はると選手からすると場に出したくなかったゲッコウガが出てきてしまったものの、クレッフィがバトル場にいることで、1ターン1回のサポートの使用権を妨害カードに回すことの多いカビゴンデッキにとっては貴重な手札補充の手段である、ロトムVの特性「そくせきじゅうでん」を封じ込めている。そうそういつまでも妨害が続くとも限らない。キルリアの特性「リファイン」でじっくりと、無駄にリソースを吐かないように動きながら、クレッフィがワザ「ねらいおとす」で攻撃し相手の次の出方をうかがう。
後攻3ターン目
たる選手、次の一手はサポート「ビワ」。彼女がはると選手の手札から「ハイパーボール」と「カウンターキャッチャー」、2枚のグッズを奪い取る。だが、はると選手の手札にはサーナイトexと「ナンジャモ」の姿があり、ベンチにいるキルリアはいつでもその姿を次のステージへ進めることができるとの無言のプレッシャーを返される。
手札が見えたことでまた、思考が次のものへと進んでいく。そのプレッシャーは、「勇気のおまもり」をたる選手の手札から切らせた。これをバトル場のロトムに持たせて残りHPを230としターンを返す。対面しているクレッフィの「ねらいおとす」で弾かれてしまうことが見えているが、 “そうされるまでは”ロトムの体力は高いままであり、190ダメージを誇るサーナイトexのワザ「ミラクルフォース」によって一撃で倒されることはない。トレーナーズでの奇襲が無い限りは、ロトムを少なくとも1ターンは場に残すことができる算段だ。
先攻4ターン目
キルリアがはると選手の元へ連れてきたサポート「ペパー」。彼が運んできた「大地の器」から超エネルギーが生み出され、サーナイトexデッキに取っては盤面の構築と並んで重要な、エネルギーの貯蓄が進む。とはいえ今回ばかりは急いでトラッシュに落とすまでは必要無さそうだ。カビゴンのデッキが攻撃してこないからこそ、ゆっくり、じっくりと盤面の構築に勤しむ。クレッフィがロトムへ攻撃し、持ち物を落としながらHPを削っていく。
後攻4ターン目
ここで返されるはサポート「ボスの指令」。ゲッコウガがバトル場に引きずり出される…が、たる選手のバトル場は依然ロトムV。まだ、カビゴンがその退路を塞ぎ、対策がなければ攻撃ができない、いわゆる“詰み”の盤面というわけではない。クレッフィの睨みを外して、ロトムが特性「そくせきじゅうでん」によってたる選手へ3枚のカードをもたらす。これがゲッコウガ呼び出しの意図だ。
先攻5ターン目
だが、ポケモンを強制的に場に出させられる対カビゴンデッキも想定されていたか。はると選手の手札から出されたサポート「フトゥー博士のシナリオ」によってかがやくゲッコウガは手札へ戻り、カビゴンで閉じ込める企みを打ち砕く。続けて6匹目の空いたスペースにサケブシッポを出して場を隙間なく埋め、「エリカの招待」などによって突然ベンチにポケモンが登場させられることを封じる。
はると選手の布陣は2体のラルトス、キルリア、フワンテ、サケブシッポに、バトル場をクレッフィが固めているというもの。こちらが勝者となるためにはサイドを取りに行きたいところであり、たる選手のバトル場にはサイド2枚分を稼ぐことができるロトムV、今はHPも190を割っていて一見チャンスに見える。ここで進化して攻撃に転じると2枚のサイドを取得できるが…。
しかしはると選手、ここは冷静。3枚ギリギリの枚数しかエネルギーを用意できていないこの状況を妨害されてしまうと、キルリアが進化して「リファイン」が使えなくなることも相まってその後も攻撃し続けられる保証はない。次のターン以降の妨害を受けたときのリスクを重く見て、引き続きクレッフィで相手との間合いを図り続ける。
後攻5ターン目
たる選手の元に集った「野盗3姉妹」がはると選手の山札を漁るが、その成果は「カウンターキャッチャー」1枚のみ。動きもほどほどにターンを終えた。
6ターン目
「ねらいおとす」ではると選手もターンを即座に返し、続くたる選手もターンエンド。
先攻7ターン目
たる選手の動きが無くなったことで攻め時と判断したか、いよいよはると選手のサーナイトが動き出す。特性「サイコエンブレイス」でトラッシュから超エネルギーを身に纏い、手札からもたらされた悪エネルギーも含めて3個分の力を揃え、ワザ「ミラクルフォース」。ロトムは耐えきれず、その報酬として2枚のカードがサイドから手札に加わる。7ターン目にして、ようやくサイドが動いた。決勝ラウンドは制限時間終了での裁定が予選での「両者敗北」とは異なり、今回の大会では「どちらかの残りサイドが2枚以下であれば、残りサイドの枚数が少ない方が勝利」となっている。サイドを攻めてくることが「ほぼ」ないであろうカビゴンデッキ相手に対し、“有効勝利”まであとサイド2枚とした。
後攻7ターン目
盤面ははると選手側の理想で進行しつつあるが、サイドが動いたことで使えるものもある。「カウンターキャッチャー」がサケブシッポを呼び出し、サポート「エール団の応援」によって「ビワ」「野盗3姉妹」「ボスの指令」の3枚の“妨害札”を山札に戻していく。加えて、はると選手の攻勢に備えて立ち上がらんと、カビゴンがACE SPECのポケモンのどうぐ「ヒーローマント」を纏って前に出る。
先攻8ターン目
カビゴンに退路を断たれているサケブシッポだが、「大地の器」で手札に加えられた超エネルギーを与えられれば問題はない。はると選手は無理して大ダメージを狙うことはせず、余計なリソースは吐かないと、最小限の動きでダメージを蓄積するプランで着実な攻めを見せていく。サケブシッポが「ビンタ」をかまし、30のダメージ。250もの体力を誇る“ごろ寝のヒーロー”はびくともしないが、それはまだ攻撃回数が1回のみだからであり、攻撃が続けばいつまでもそうとはいかないだろう。
後攻8ターン目
「大地の器」の片割れの超エネルギーが手札に残っていることもあり、たる選手の使用した「ナンジャモ」がお互いの手札を流すが、サケブシッポの行動を封じられたわけではないため、その体に手形が増えていく。
11〜15ターン
盤面を攻め続けられるたる選手だが、こちらにもこちらの攻め手がある。「野盗3姉妹」が山札から「ハイパーボール」「アンフェアスタンプ」「すごいつりざお」の3枚を盗み、「ビワ」が手札から「なかよしポフィン」「ヒスイのヘビーボール」を強奪。たる選手のサポートに回った彼女達がはると選手のリソースを削り、「ともだちてちょう」で再び活躍の舞台に備えていく。
15〜16ターン
盤面を攻めるはると選手と、山札を攻撃するたる選手。別の対象を攻撃した睨み合いによってお互いに我慢が続くが、7回目の攻撃を受けてカビゴンの限界が近づいてくると、「カウンターキャッチャー」により次はフワンテが呼び出される。
フワンテはワザを使うには2個分のエネルギーが必要だが、ここで引くわけにはいかない、とサーナイトの補助を受けてエネルギーとダメカンを蓄え、「バルーンボム」でカビゴンを攻撃。長いターンをかけて蓄積したダメージは270に到達し、何とかカビゴンを退場させる。はると選手、残りのサイドは3枚。有効勝利まであと1枚とした。
後攻17ターン目
引き続き「とおせんぼ」のカビゴンを繰り出すたる選手。今度のカビゴンは「ハンディサーキュレーター」を持っており、フワンテが次のカビゴンへも攻撃を繰り出すが、風に流されてしまうその軽い体に蓄えられたエネルギーは、カビゴンに持たされた扇風機によってベンチへ吹き飛んでしまう。
「ヒスイのヘビーボール」と「ネストボール」、2種類のボールからそれぞれカビゴンを捕まえたたる選手がターンを返すところで、25分の経過、対戦時間の終了が告げられる。対戦を見守るジャッジが状況を確認するが、「お互いの残りサイドの枚数が3枚以上」であることから、「どちらかのサイド枚数が2枚以下になる」か、それ以外の勝敗条件が満たされるまでの延長戦との判定に。彼らの戦いはまだ終わらない。
先攻18ターン目
だが、続くターンを得たはると選手はここで攻め手が止まってしまう。
エネルギーが、ない。少しずつ着実に進めていた勝利への道があと一歩というところで通行止めを受け、ワザを使うことなくターンを終える。ようやくこちらのペースに入ったかと意識するたる選手もターンを返し、はると選手は引き込んだ「ナンジャモ」を使用するも、いまだエネルギーを引き込めない。
後攻18ターン
対してたる選手は“入れ替えられた”手札から傷んだカビゴンをいれかえカートで回復させつつ、HP満タンの元気なカビゴンをくり出していく。そちらにも「ハンディサーキュレーター」を持たせており、小さなダメージの蓄積も牽制済みだ。はると選手がサポートを頼んだ「ナンジャモ」は、無常にもたる選手に力を与えることに。更に“ショウチクバイ“と名乗る3人組が、はると選手の山札から「ハイパーボール」を捨て去り、山札切れまで歩を進めていく。
先攻19ターン目
はると選手は山札の上から1枚のカードを引いてはターンを返し続け、たる選手も「ともだちてちょう」で有効なカードを集めながら追随してターンエンドを宣言する。はると選手にとって状況の打開策となるのはワザを使うために必要なエネルギーカード。「すごいつりざお」、「ネストボール」、「なかよしポフィン」…と手札に加わっていくカードを確認し、次のカードは「ペパー」。山の中を確認すると残るエネルギーは超エネルギー1枚のみ。
この1枚でサイドを取ることができるか?
…いや、いける。一度攻撃を与えたベンチのカビゴンは、「いれかえカート」で回復したとはいえ、残りHPは120。このエネルギーカードを引き込んでそれをトラッシュに落とし、「サイコエンブレイス」を経由してフワンテにエネルギーを付ければ120ダメージを出すことは可能だ。相手の「ハンディサーキュレーター」を外せないため、ほぼ間違いなく次の攻撃が最後の一撃になる。手札にある「ボスの指令」に視線を送り、ドローに力が入る。
「有効なカードを…!」
「無駄牌を引いてくれ…!」
「何も動くな…!」
「そのままターン帰ってこい…!」
お互いの祈りを乗せたドローとターンパス。
繰り返す度に緊張が高まり、選手も、ジャッジも、観客も、息を呑んでいく。
…そして数ターン後、遂に終止符が打たれる。
先攻28ターン目
だが、そのカードは超エネルギーではなかった。
たる選手が使用した、サポート「ボタン」。
30ダメージを受けていたカビゴンはそのダメージを取り除いて手札に逃げられてしまった。山に残っているカードではあと1枚のサイドを取ることができない。
返しのターンに山札の上から引き込んだ、“ワザを使うための紫色のカード”は間に合わなかった。敗北を悟ったはると選手はラルトス達をキルリアへ進化させ、自分から山札を引き込み出し、そうして“山札切れ“による敗北を迎えた。
必要なカードを探しに行きたいが、自分の山札切れも迫っている状況。
はると選手は超エネルギーをただ手札に引き込むだけではなく、加えてトラッシュに落とす必要があったため、キルリアの特性「リファイン」を無暗に連打すればいいわけでもなく、どこまで踏み込むかの判断が難しい試合であった。もしかしたらより良い選択肢があったかもしれないし、引き込めたかどうかは時の運もある。だが結果として、決勝ラウンドのルール上、普段よりも厳しい戦いを要求されたたる選手は見事にはると選手の攻勢を抑え、ベスト8にその名を連ねた。
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