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インサイド・アウト(長編小説)

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#長編小説

インサイド・アウト 第1話 左右対称の顔の女(1)

「もうこの世に充分満足されたのではないですか?」  二名掛けのテーブル席の向かい側に座っ…

インサイド・アウト 第1話 左右対称の顔の女(2)

「耳を疑っておられるようなので繰り返します。あなたはもう、この世に充分満足されたのではな…

インサイド・アウト 第1話 左右対称の顔の女(3)

 それでも僕は、高校入学を機に少しずつ変わっていった。華奢で弱々しい体型だったが、胸を張…

インサイド・アウト 第1話 左右対称の顔の女(4)

「念のため確認させて欲しいのですが、『お迎え』とは一体どういう意味ですか?」と、僕は左右…

インサイド・アウト 第2話 樹海からの招待状(1)

 本日三本目の発泡酒を喉に通しながら、わたしはスマートフォンのSNSアプリを起動した。女…

インサイド・アウト 第2話 樹海からの招待状(2)

 物心ついたときから、わたしは何となく気がついていた。自分が可愛くないということに。周囲…

インサイド・アウト 第2話 樹海からの招待状(3)

 それから三十分ほど待っても、Sからの返信はなかった。  彼がわたしのコメントを読んだのかどうかはわからない。見ず知らずの人間から来た短いコメントに、どう対応すべきか困っているのだろうか? もしかしたら、わたしは気持ち悪いと思われているのだろうか?  後悔にも近いもやもやした気持ちが胸を覆っていく。  反応が欲しいのなら、そっけない短文などではなく、相手が反応しやすいようなコメントを送るべきだったのだ。いや、そもそも知らない人に対してコメントすること自体、わたしには行き

インサイド・アウト 第3話 不在着信と差出人不明の手紙(1)

 マンションのエントランスは、厳重にロックされていた。  僕は六桁の暗証番号を入力して、…

インサイド・アウト 第3話 不在着信と差出人不明の手紙(2)

 男と電話をしている間に、夕飯はすっかり冷めていた。  温め直すこともせず、冷めたご飯に…

インサイド・アウト 第3話 不在着信と差出人不明の手紙(3)

 自分の肉体と重ね合わせていた三日月に別れを告げてマンションに入ると、ポストに一通の白い…

インサイド・アウト 第3話 不在着信と差出人不明の手紙(4)

 手紙はここで終わった。  僕は三枚の便箋を手に持ったまま呆然と考えていた。  論理を超…

インサイド・アウト 第4話 エス(1)

 『S』が投稿した《青木ヶ原樹海》の写真を見た翌日、わたしはかつての職場の同僚だった友美…

インサイド・アウト 第4話 エス(2)

 そのあとも友美のペースで会話が弾んだ。童顔で若く見える既婚の友達の話に戻ったかと思えば…

インサイド・アウト 第4話 エス(3)

 リビングのソファーに横になった途端、全身の力が一気に抜けるのを感じた。このまま化粧も落とさずに眠りに就きたいほどだった。幸い、両親はまだ仕事から帰って来ていない。  たまに活動的になると、必ずどこかで反動が来た。まるでバネのように、ある方向に力を加えると、それとは逆方向に弾性のような力が発生した。押す力が強ければ強いほど、反発する力は大きくなった。あるいは、高台から海に飛び込むような感覚と言った方が近いかもしれない。その勢いに比例して、深度も増す。地上からの光が一切届かな