万年

開いた本のカビ臭さに咳をして
ここに何年もあった事実を吐き出す
ただしく
正しく
正常に
折り重ねていかねばならない生活が
目の前にいて
いま、ここ、このいっときに
正しく正常な
反論をせねばならない
思いを全部口にして
投げだされた音が痛い

わたしは
いつかの母と同じ台詞を言って
押し黙る
これきっと血
正しい血統を持ったわたし

何年もここにあって本を手放すということは
わたしが切断されていくということ
知識なんて脳内のどこにも存在しない
小さく軽く燃える分納紙

吹きこぼれる灰が
散り散りに吹雪いて
わたしが燃えて痛い

血が溢れている
この世のどこにだって
飽和して沸騰して道になる

かなしいことしか詩にできません
なんて
寒々しい日々があります。

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