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ただ、そうする
自宅のリフォームで家を空ける必要があって、数ヶ月間ほど、友人宅でお世話になっていた時のこと。
ただいまー!と玄関を開けると、いつもご飯を作ってくれていて、その日の友人の仕事の話などを聞きながら、一緒に食べた。あたたかいお布団も設えてくれてあり、おやすみ、と言ってスイッチを切ったようにパタっと眠る。朝は美味しそうなコーヒーの香りで目が覚める。カップになみなみと淹れてくれたコーヒーを飲みながら、大きく開けられた窓から入ってくる朝の空気を一緒に吸い込んで。
わたしは、友人のその、状況をすっぽりと受け入れて「ただそうしてくれる」ことに毎回驚いてしまう。一つずつの言動に一切の無理がなくて、してあげる、という見返りを求めるような素振りなんて本当に微塵もなく、自分ごととしてやっている。こちらをただそのまま存在させてくれるのだ。相手を大切にするってこういうことなんだ、と思う。
そうして大切にしてもらう時間を過ごすと、ずっと私の中にあった張り詰めていたもの、常に生きるか死ぬかを問われるサバンナの動物みたいな強い緊張感が、すぅっと大人しくなって、深く入っていた傷が柔らかくなったように感じた。生きることに直結する部分を大切に扱ってもらうと、深く癒されるのだということを、知る。大丈夫、という安心感とともに。
友人が「ただそうしてくれた」こと、忘れない。