13枚目「 影を置く場所 」

夜中にわざわざ、橋の真ん中まで歩く
そこで煙草を吸う


煙は夜に紛れ、香りだけがしつこく残る

そこから見える、遠くのマンションの蛍光灯が点滅している
道をゆく人は、その事実を知らない
気づくまで知る事もないだろう

橋の下の静かな音は、下から夜を照らしている
凍てつく風は鋭く、夜を切り裂きながらどこかへ消える

通らなくなった道があることに気づく
その道は私が通らずとも、そこにあり続けるだろう

私を守る外套は揺れる
手元からは灰は落ちる

横の信号機が、人もいないのによく働いているなと感心する

煙草は短くなり火は弱々しくなっていき
ゆっくりと消えていく様を眺めた後には帰路に着く


日々の流動する不動を楽しむ
明日も橋の上には私の影があるだろう

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