11枚目「くちから出たしゃぼん玉 」

言葉は空気よりも軽く、鉛より重い

私の吐く言葉はヘリウムで
ひょうきんで無害で仰々しくて嘘くさい

それは私が選んでいるからで
ヘリウムを出す元栓は頭の中にちゃんとある

言葉は感性であり、感性が言葉を紡ぐ(こともある)


元恋人は、軽々しい言葉が嫌いだ、と言った
だから私はそれを言葉にしないのだ、とも言った

じゃああなたの口はなんのためにあるのか
と元栓を開けぬまま口から出そうとしたが飲み込んだ

伝える手段を自ら減らしてしまっているんじゃないかな
とヘリウムで膨らました風船を手渡した

すると
元恋人は、言わないし他の方法で示す、と
私の風船はどこか遠くへ飛んでいってしまった

以降私は、私の発していた言葉が
軽々しいと思われていたのではないかと怖くなり
段々と自分の気持ちが磨り減っていった


それから少し季節は流れ
ある日、元恋人がその言葉を口にした
「愛してるよ」

シャボン玉のように軽く
すぐに消えてしまったような印象を受け

私は空耳かと思って無視してしまっていたが
それがどうにも良くなかったのだろう

その言葉を返さなかったために
なぜその言葉を今まで口にしなかったのかを説明された

簡潔に言うと
家庭環境もあり人を信じていないからだ等々

ただ、その説明を聞いた私は
身から出た錆じゃないか、と思ってしまった


その一件からは
気づけばお互い、ヘリウムもシャボン玉も出さないようになっていた
(当時の私は、互いのその状態に気づけなかった)

そのようなことがあり私は、風船は人に渡しても
シャボン玉のような自己満足は出さないようにしようと思う


また、今思うのは
元恋人の、身から出た錆が全て落ち

鈍くても光る刀身であればいいなとも思う
その頃にはシャボン液もなくなっているだろう

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