【鳥白島旅行記】さしずめ牛は……旅立ち編
翼が折れていた。
日々積み重なるストレスに、耐えられなくなっていた。
ふと過ぎる光景は、SummerPocketsで浮かんだ夏の景色。
そうだ、鳥白島へ行こう。
朝5時代の京成線始発。
この電車に乗って成田空港へ向かう。
3月も終わりに近づき、窓の外には桜が咲いている。
そうだ、もう、そんな季節か。
コロナ禍の在宅勤務で家を出ないから、
そんなことにも気づいていなかった。
京成電車は空港第2ビル駅へ6:17に到着する。
飛行機の出発時刻は7:15。
こう書くと、出発までに大分余裕があるように思えるが、実際はギリギリだ。
LCCが出発する成田空港第三ターミナルは、
空港第2ビルから700m程度離れている。
だいたい、徒歩10分くらいの距離になる。
さらに、今回手荷物を預けるのだが、手荷物締切は6:45。
つまり、15分以内に手荷物の手続きを終わらせなければならない。
それなりにシビアだ。
第三ターミナルへ向かう道は、道路上に青色の線で分かりやすく書いてあるから、迷うことはない。
早足で青い線に沿って進む人たちに並んで、第三ターミナルを目指す。
第三ターミナルに向かう道すがら、バスを発見した。
「成田空港第三ターミナル行き、間もなく発車します」
ツイてる!!第三ターミナル行きの連絡バスだ!!
大きな荷物を抱えて息を切らしながら、バスに乗り込んだ。
連絡バスがあるなら、それをアテすればいいじゃん?
と思うかもしれないが、このバスは実はあまり実用性がない。
というのも、空港第2ビル駅出口からバスまで200mくらい、
そしてバスが到着してから第三ターミナルまで100mくらい。
結局バスを使っても、400mくらいしか短縮にならないのだ。
タイミングが合えば使うくらいに考えていた方がいいだろう。
もしくは、荷物が大きすぎたり、足が悪くてあまり歩きたくないときとか。
第三ターミナルに着いた時、すでに空港はごった返していた。
「ジェットスター大阪、福岡行きはまもなく搭乗手続きを締め切らせていただきます」
よかった、自分が乗る予定の飛行機じゃなくてほっとした。
さっき、ダッシュで第三ターミナルに向かっていたのは、この飛行機に乗る人たちか。
ジェットスターは6時代、7時代の早朝便がかなり多い。
始発電車で来てもギリギリのこの時間帯の飛行機は、
ただでさえ安いジェットスターの昼間の便に比べて運賃も割安になっている。
ジェットスターはLCC、要するに「安くする代わりにサービスしないよ」というエアラインである。
座席の指定も有料、手荷物も追加料金が必要、お金を出さなきゃ飲み物もくれない。
ただ、その分運賃はお値打ちだ。
ANAで高松へ向かう場合、14,000円くらいが相場だが、
今回ジェットスターで追加の手荷物料金を含めた料金は、8,700円。
5,000円近く違うのであれば、飲み物なしも選べない席も受け入れよう。
乗る時期や予約タイミングで金額は大幅に変わってくるが、今回はなかなか安いときに予約できた。
ジェットスターはLCCなので、手続きも自分でやってくださいスタイル。
スタッフも2,3名いるのだが、押し寄せてくる客に明らかに足りていない。
こちらから声をかけなければ何もしてくれないし、そもそもあちこちで呼ばれていてなかなか捕まえられない。
でも、自動チェックイン機や手荷物タグ発券機などは豊富に台数が用意されているので、
自力でこれらを操作できる人だったら、何も困ることはない。
チェックインは事前にWeb上で行い、飛行機のチケットもメールで電子チケットで送られてくる。
空港の機械に電子チケットのQRを読み込ませれば預け荷物のタグが発券され、
それを荷物につけて自動手荷物預かり機に入れれば、すべての作業が完了する。
……はずだったのだが……
手荷物預け機に荷物を載せ、計量を行うが、なかなか先に進まない。
「しばらくお待ちください」の表示のまま、ずっと先に進まない。
こうしている間も、出発時間が刻々と近づいてくる。
仕方ない、これはさすがに声をかけるしかない。
自動預け機の不調で時間を取られ、窓口での預け時間もギリギリ。
別のカウンターに案内され、なんとか荷物を預けたときは、すでに搭乗時間ギリギリだった。
急いで身体検査へと進み、搭乗口へと急いだ。
機内は8割がた埋まっていた。
思っていたよりも乗客が多い。
指定なしであてがわれた席は、通路側の席。
ジェットスターはWi-Fiも使えない。
スマホを機内モードにしたら、やることもない。
朝早かったのも幸いして、離陸後すぐに眠りに落ちた。
目が覚めたのは着陸態勢に入ったあたり。
遠い窓の向こうに見えるのは、瀬戸大橋だろうか?
空港をぐるっと回って、山並みが視界に近づいてくる。
すこし左右に揺れながら、タッチダウン。
定刻よりも少し早めに、高松空港に到着した。
荷物を受け取り、リムジンバスのチケットを買って空港を出る。
外に出た瞬間、一気に空気の匂いが変わる。
この瞬間が好きだ。
高松空港から高松駅へ向かうリムジンバスは飛行機の時間に合わせて運転される。
旅客が多ければ続行便も出してくれるようなので、
それほど困ることはないだろう。
高台にある高松空港から下り、高松の市街地に向けてバスは走る。
自分は駅までは行かず、途中の『ゆめタウン高松』で下車。
ここが目的地という訳ではない。
徒歩で少し戻ったところにある、「ドン・キホーテ高松店」
こちらで買い物を済ませる。
今夜は女木島でキャンプ。
だが、女木島には土日営業の商店が1つもないので、買い物はここで済ませておく必要がある。
飛行機で運ぶことができなかった、バーナーのガス、チャッカマン。
今夜食べる食料品などを買い込む。
ヘッドライトも忘れてきたため、ここで購入。
ここのドンキ、アウトドアグッズコーナーがなかなか充実していて、
ついつい以前から興味があったアウトドア用品も買ってしまった。
さて、ここからが徒歩移動である。
目的地のホンダドリーム高松まで、距離にして2kmと少し。
所要時間はGoogle曰く26分。
これくらいなら……と甘く見ていた。
今日のキャンプで使うためのテント、寝袋、マットレス。
日数分の着替えと、さきほど買い込んだ食料など。
そして、この後バイクに乗るために持参したヘルメット。
これらの重量がずしりと身体にかかる。
季節が春でまだよかった。
これがサマポケの時期だったら、間違いなく炎天下の熱中症で行き倒れる。
半分朦朧としつつも歩き続ける。
次第に腹が減ってきた。
家を出る前の午前4時くらいに食材処分にチャーハンを作って食べてきたが、
時間も10時を周り、腹が減ってくる時間だ。
目的地のホンダドリーム高松を目の前にしたとき、その向かいにあるものの方が気になってしまった。
「こがね製麺所 勅使店」そう、讃岐うどんだ。
この時点で時間は10:45。
レンタル開始時刻が11時、フェリーの時間は12時。
バイクや車で乗船するときは乗船の手続きがあるので、早めに行く必要がある。
あまり時間に余裕がないが、ここで食べ損ねれば女木島でも食事は厳しい。
何より、炎天下を歩いてきた俺は、腹が減っていた。
思い切って店内に飛び込み、「醤油うどん大、つめたいので」と注文。
さすが本場、一瞬で出てくる。
ネギと天かすは自分で入れる。
讃岐うどんのしっかりとしたコシ!!
きりっと冷えた醤油うどんで、歩いてきた身体が一気に癒される。
そうだ、時間がなかったんだ。
ちゅるんと早めにいただいて、店を出る。
ホンダドリーム高松に到着、時間は10:55だ。
店にはすでに乗る予定のバイクが用意されていた。
ホンダ・スーパーカブ110。
これが3日間お世話になるバイクであり、作中で羽依里が乗っていたバイクの新型にあたる。
……まぁ、まっピンクなんだけど。
車体がかわいらしいピンク色。
このカブは「天気の子ver」であり、作中に出てきたカブと同じカラーリングになっている。
ホンダでレンタルしているカブは基本的にこれだけだ。
四の五のいわず、みんなピンクのカブに乗ろう。
店内に入ってバイクレンタルの手続き。
通常12,000円のところを、初回レンタルの割引クーポンが使えて、3日間でなんと9,600円。
レンタカーだと1日少なくても5,000円くらいはするので、これはお値打ちだ。
初めて乗るカブ、カブは他のバイクと操作方法が少し違うのだが、ちゃんとレクチャーしてくれる。
ここまで運んできた荷物をカブの荷台に括り付ける。
港までのルートを確認したときは、もう11時をそこそこ回っていた。
いそげ!!フェリーは12時出発。
港に向かってバイクを飛ばした。