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【北欧暮らし】十日夜を楽しむ。オーロラのたなびく北極圏の月見。 【日々の記録No.04】




北欧圏で十日夜に北窓(冬のおはぎ)作り。

2024年11月10日は十日夜。旧暦では10月10日の行事で、この日は秋の収穫を祝う日で、稲刈りが終わって田の神様が山に帰る日だと言います。

"二夜の月"十五夜、十三夜に加えて三月見とされ、その最後の日でもある十日夜ですが、他の二つの月見比べると月見自体にはさほど重きは置かれていない行事。ただ、我が家では十五夜、十三夜ともに出張で祝えなかったので、今回はしっかりとお月見を楽しみました。

伝統行事に欠かせないものは、やはり行事食。十日夜には特別決まった行事食があるわけではない(それほど知名度の高い行事ではないから?)ようですが、稲の収穫を終え、その秋の豊穣を祝い、田の神様へ感謝をする日というわけですから、やはりお米やお酒をお供えするというのが通例なのか、北窓(おはぎの冬の呼称)を食べる人も多いようですね。

我が家でも北船を作ってお月見を楽しみました。当然スウェーデンで和菓子が売られているわけもないので、こちらで日本の年中行事を行う際はもっぱら一から全て自分で準備することになります。

餅米と小豆は日本からの持ち込み。どちらもそれなりに重量があり、当然ながら大量に持ち込めるものではないので、その意味でもこれらを使ったお菓子を作り、食べるというのはとても贅沢で非日常感のある事です。日本に住んでいる頃から年中行事は大切にしてきましたが、こういうこともあってか、こちらに移住してから各行事に対する特別感が増したように思います。

ちなみに北窓といってもあまり通じないのですが、炊いた(蒸す場合も)餅米を餡子で包んだ甘味のことで、春には"牡丹餅"、秋には"お萩"と呼ばれます。"北窓"は冬の呼称で「北窓」、夏の呼称は"夜舟"です。

十日夜は満月ではない?

さて、旧暦10月10日に祝われる十日夜ですが、旧暦は新月の日を各月の1日とするので、もちろん月齢は10日。満月ではありません。

お月見というと満月を想像しいがちですが、実は三月見のなかで満月なのは十五夜だけで、他の二夜は欠けた月を愛でるのです。この感覚は非常に日本人らしいところですね。

せっかくなので、望遠レンズを引っ張り出してきて、十日夜の月を撮影しました。

ちなみに、月の満ち欠けは太陽と月と地球の位置関係によるものですから、当然ながらスウェーデンでも日本と同じ月が(厳密には時差分だけ月齢もずれますが…)見えます。調べてみたところ、この日の月は日照率63%だったようです。

さて、十日夜の月見をしていてふと思ったのが、この月には別称がないなということ。日本では古来から月が尊ばれており、そのためか月齢によって月には様々な呼び名が存在します。有名なもので言えば、満月、晦、下弦の月、上弦の月など。十三夜、十六夜(いざよい)、小望月なども知られていますね。もちろん特別な呼称がない日もありますが、特に満月から下弦の月までの間は1日ごとに異なる呼び名があるほどです。

にもかかわらず、そして十日夜っという行事があるにもかかわらず、この月には呼び名がない(十日夜というのはあくまで旧暦10月10日の事を指し、月齢10日の月を指す言葉ではありません)。不思議な事ですね。

月見の晩のオーロラ 

さて、和菓子を用意して、異国ながらに和の風情を感じながらお月見を…というつもりだったのですが、そうそう思うようにはいきません。

なぜならここは北極圏なのだから。

この季節の北極圏の夜に忘れてはならないもの。そうオーロラです。

実はこの日も含め、この週末は太陽活動が活発で、それに伴いオーロラの活動も非常に活発だったのです。それこそ前日の晩は夜中前から朝の5時頃まで、その渦巻くような構造や色(珍しいピンク色オーロラまで!)が刻一刻と変化していく様が肉眼でも捉えられるほどの劇的なオーロラが断続的に出現していました。

そして、十日夜当日も夕方17時頃(現在日没は14時頃なので既に十分に暗い)からオーロラが出現していました。その結果、実際のお月見の景色がこちら。

月とオーロラの共演ですね。間違いなく美しく、幻想的なのですが、日本の月見の風情とはだいぶかけ離れたものになってしまいました。

実は本来はオーロラ撮影にとって月の光は大敵で、オーロラを見たい人からは月が出てしまうことはあまり歓迎されません。というのもオーロラの光というのはさほど強いものではなく、月明かりに邪魔されてしまうのです。

とはいえ、個人的にはある程度オーロラが強ければ、月とオーロラが同一視野に出現するのはとても好きな光景です。さらに月に薄く雲がかかっていればより風情が増します。

こればかりは、北極圏に暮らしていて、普段からオーロラを見慣れている人間の特権でしょうか。一度しか見る機会が持てないという状況なら、やはり一番ピュアで最高な状況で見たいものでしょうからね。もちろん新月の夜の雲ひとつない空に一縷の陰りもなく冴え映えるオーロラも魅力的ですが、多少雲がかかってぼやけていたり、月明かりと干渉していたりというのも趣を感じるものです。これもまた欠けたものに美を見出す日本人的美意識なのかな。

今回の状況は個人的にはほぼ理想的な状況といえます。寒空の下、ベランダに出てお月見をした甲斐がありました。残念なのはオーロラをはっきりと撮ろうとすると月の光が相対的に強すぎてカメラでは月が単なる発光球のように写ってしまう事ですね。肉眼ではもっと上品かつ控えめにいるのですが…。


Youtubeでは北極圏での一人暮らしの日々の生活についてのvlogを発信していますので、よろしければそちらもどうぞ。




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