大腸全摘と痔の関係
私は、ヒルシュスプルング病により0歳で大腸(結腸)全部と小腸の一部をとっています。
今回は、大腸全摘と実は関係の深い「痔」について、とくに痔ろうについて、私の体験談を交えた内容をお話しします。
痔はよく知られている病気であり、テレビでも市販薬のCMをよく見ます。ざっくり短く言うと、肛門の何らかのトラブルによって出血や痛みが出る病気です。
私はこれまで痔になったことがなく、あまり詳しく理解できていませんでした。何となく、長時間座っているドライバーがなりやすい、排便でいきんでばかりいるとなりやすいくらいにしか思ってなくて、しかもちょっと恥ずかしいものというイメージを持っていました。
長時間座りっぱなしの仕事でもなく、排便でいきむこともない私がまさか痔ろう(痔瘻:じろう、あな痔ともいう)と言われるとは…。
痔は大きく3つに分けることができます。いぼ痔、切れ痔、痔ろうです。
もっとも多いのがいぼ痔で、痔の半分以上がこのタイプのようです。肛門に血豆ができたイメージで、出血や痛みがあります。
切れ痔はその名のとおり肛門付近の皮膚が裂けてしまった状態で、便秘がちな女性に多く、痛みが強いと言われています。
そして痔ろう。痔ろうとは、肛門内部のくぼみから細菌が感染し、膿のトンネルを作ってしまうものです。痛みがあり、ときに発熱したりします。主な原因は下痢。中年以降の男性に多いと言われ、私はなりやすい条件がそろっていました。
私の体験談です。
大人になってから肛門のトラブルは全然なかったのですが、ある日の入浴中、ふとおしりを触ると肛門付近にしこりができているのに気づきました。
痛みもなかったので気になりつつも経過観察。すると翌日の午後からそのしこりが急に痛み始めました。用があって自転車で遠出していたのですが、その圧迫や摩擦が悪化の原因なのかとにかく痛い。ちょっと触っても痛い。
これは何かのできものだな、診てもらった方が良さそうだと近くの肛門科を検索。休診日が重なったりして、結局受診できたのは発症から3日後でした。でも、その頃には痛みのピークは過ぎ、しこりを強く押すとちょっと痛いくらいまでに治まっていたので、念のためくらいの軽い気持ちで受診しました。
肛門の診察(案外痛かった)の後、問診票とにらめっこしていた医師がつぶやきます。「手術は難しいよな…薬でねばるしかないよなぁ…」と。
でかいニキビのようなただの吹き出物と思っていたので、手術という言葉に驚き、「痔なんですか?」と聞いてしまいました。医師は肛門の模型を片手に説明してくれました。痔ろうというものだそうです。
痔ろうというのは名前は聞いたことがありましたが、病態はよく知りませんでした。でも、聞いたり調べたりするほど恐ろしい。
私は大腸全摘していて排便回数が多く、便の性状も常にゆるいのですが、「痔ろうは下痢の人の宿命みたいなものなんですよ」とも言われました。
慢性的に下痢だとくぼみから細菌が入りやすく、しかも中年以降の抵抗力や肛門周囲の筋力の低下などいろいろな要因が複合的に影響してなりやすいとのことです。
痔ろうの根本的な治療は手術しかないらしいですが、慢性的に下痢だと手術創の回復が妨げられてしまい、手術が難しくなってしまうそうです。
かと言って手術のために無理に排便を止めると小腸が大変なことになります。そんなの苦しくて嫌です。
結局はとりあえず内服薬などで化膿を抑えていくしかないですが、繰り返すたびにトンネルが増えるというし最悪の場合は癌化するとも言われています。
さてどうなることやら。
前触れもなく痔ろう問題が浮上して戸惑っていますが、これも長期的に見たヒルシュスプルング病根治術後の問題のひとつなのでしょう。
もちろん、慢性的に下痢の人が必ずしも痔ろうになるわけではないですが、ハイリスクなのは間違いないようです。
やはり、ヒルシュスプルング病は、ただ腸を切り取っただけで治療が終わるというわけではないですね。
痔ろうについては、今後も経過を含めてまた何かお伝えできたらと思っています。
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