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今回は日記形式。本当は4作で一つにするつもりだったのだけど、文字数が合わなくなったので分割。早速いきましょう。
無職転生 16話 『親子げんか』
魔大陸の旅を続けてきたパウロとルーデウスが感動の再開…とはならなかった今回。パウロの尚早ぶりは見た瞬間に分かり、それがラストに明かされることで、ルーデウスが取り返しのつかないミスを犯したと判明する。
思えば魔大陸に飛ばされた瞬間から情報量が著しく低下し、村がどうなっているかに考えが及ばなかったので、上手く転がされたなという感覚。転移後はルーデウスの成長物語に徹し、順調な帰路を辿っていると示し続けていたので、いい裏切りだったと思う。
さて、パウロの方は…やはり、父なら息子の無事を何より喜んでほしいところ。それでも、ゼニスとリーリャへの愛情から、本気で憔悴している部分は好感が持てた。
最初からルーデウスが無事だと考えていたことも、彼の才能を評価し、一人前の”男”とみなしていた証なので、責める気は起きない。とはいえ、ルーデウスもまだ12歳。前世はあるが、期待されたためしはない。才能が時に失望を呼ぶことも知らないはずだ。今回の件は、どちらも正しく、どちらも間違っているのだろう。
それでも視聴者側からすれば、やっぱりルーデウスの肩を持ちたくなる。魔大陸での出会いと成長は嘘ではないからだ。彼なりに必死であったことも、絶えず命の危険に晒されていたことも、体験的に知っている。
なので、ルーデウスにはパウロが「こいつはこいつなりにやってきたのだ」と思えるような活躍と、二人がまた手を取り合えるような関係の改善をやり抜いてほしい。それこそ、父の見た一人前の”男”の幻想が、全くの嘘ではなかったと示す、唯一の道だからだ。
個人的には、パウロのことをあまり嫌いではない。寧ろ、結構好きな方だと思う。浮気+妊娠のコンボは言い訳がつかないが、ルーデウスの父としては、幼き我が子と共に喜び、時には諭す、理想の教え方が出来ていた。
ルーデウスと不和を起こすのは、二人の感情に大きなズレが生じた時だ。だから、二人が手を取り合うには、同じ方向を向く必要があるのだと思う。それをどのようにやるか。前回は正論をぶつければ解決できる状況だったが、今回は議論で解決する類の問題ではない。
行動の中で、ルーデウスが如何に自身の成長を示すか。母、友の行方不明という最大の難問に、どう立ち向かうか。裏で時限爆弾を仕掛けつつ、魔大陸での旅も見事に描いたところを見れば、回答にも期待できると思います。今後も楽しみ。
さんかく窓側の外は夜 5話 『過去』
静かに夜を告げるBLホラー、5話は英莉可の孤独を知らせつつも、深い部分で康介と繋がっていると明かされるエピソードだった。
圧倒的ラスボスオーラを放って登場した非浦英莉可は存外可愛く、表向き普通の女子高生だ。しかし、裏ではヤバい仕事をやり…正確には、『先生』にやらされている。
『先生』の闇がどこから来るのか、無垢な(というにはスれている)高校生を巻き込んで人を呪う目的は何か?
冷川の態度も定まらず、4話の時点で三角(=視聴者)は途方に暮れている。今回視聴者にだけ情報が明かされ、三角は袋小路へ置き去りにされた。血の繋がりを覆い隠すほどに強く塗りつぶされた”黒”が、着実に彼を追い込んでいる。
それでも、姿を変えずに彼(三角)を守り続けている存在がいる。力強く示された、母の矜持と覚悟。それは英莉可が欲して得られず、塞ぎ込んでいるものでもある。英莉可と通じる上で三角がやるべきことは、血の繋がりを理由に全てを受け入れてくれた母の思いを引き継ぎ、手を差し伸べることなのだろう。
しかし、『先生』の闇から手を振り払い生還するには、三角の力はあまりに脆い。むっつり顔の冷川は忠犬として彼を扱いつつ、その実、闇の誘いから彼を守ってもいる。いや、実際のところ忠犬は冷川の方なんだけどな…「冷川理人は三角康介に労働を提供する」って、こえーよマジ…
男男珍道中もなかなか難儀なもので、迎系多は冷川の姿勢を咎め立て、厳しく追及する。確かに冷川の力は強く、三角を守ることが出来る。しかし、その力の振るい方ひとつで、三角を壊してしまうことも出来る。だから系多は言う、「別のやり方を覚えろ」と。
系多と冷川の対峙は、養育を巡る両親の姿勢にも通じるものがある。子を守るも壊すも、親の力は十分なものを持っている。実際に、三角の母は彼を守り抜いた。対して、英莉可の両親は彼女を『先生』と引き合わせ、既に彼女の精神は窒息寸前だ。
三角が英莉可を守るためには、冷川が三角を守り抜く必要がある。その意味で、彼(冷川)はこの物語の命運を握っているといえる。しかし、強い力を持ったヒーローは、自らを相手に売るほど臆病な精神をした子犬だ。
物語をハッピーエンドで終えるには、守られるだけの対象だった三角も冷川の精神に入り込み、彼を救ってやる必要があるだろう。
冷川の存在は、『先生』となった三角の父とも通じるのが面白い。『先生』は、既に壊す側に回ることを選択している。彼は孤独だった。他に能力を知る者はいない。その絶望が、深い闇に繋がってしまったのだろう。
冷川は、まだ守るも壊すも自由に選択できる身だ。無論、守る選択をしなければ、この物語はバッドエンドに繋がっていく。先生と似た孤独に苛まれる彼に寄り添い、希望を指し示すことで、連鎖的に三角、英莉可も救われていく物語なのだろう。ヒロインだなー、アンタ…
基本的に”視える”奴らが集まって展開する物語には、信じない半澤さんも、寄り添うことを既に身に着けた系多もいる。全員の力を合わせて、閉じた扉をこじ開けられるか。これは、そういう話なのだと思う。
まだまだ冷川の胸の内は謎だが、どのような形であれ、彼の奥深くにある震えを取り除くことで、道が開けることは確かだ。その為の鍵も、強き母が既に示している。自身の存在も定められずフラついている三角が、どう冷川の心に辿り着くか。『先生』との対決含め、楽しみに見ていきたいと思う。
サムネイル画像:©理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生」製作委員会