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猫の影・偽

夏を過ぎ、少し涼しくなってきた。
うちの庭にある楓の枝が風に揺れている。
その根元に黒猫がいた。
遠く目に見てもきれいな毛並みで、
どこかの飼い猫なのだろうか、
私に気付いても逃げない。
木漏れ日に目を細め、
佇む姿はまるで絵画のようだ。
昼を過ぎ影が濃くなった頃、
猫がずるりと影に飲み込まれた。
驚いて、猫が消えた辺りまで駆け寄る。
入れ替わるように黒髪の束が残っていた。
それもやがて風に舞ってどこかへ行ってしまった。

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