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〈小説〉スカートとズボンの話 #9
1997年 華19歳
わたしは高校を卒業して、ある女子大に進んだ。
パパが勧めた大学で、複筒の学生が多かった。単筒が圧倒的多数の世の中で、わたしが肩身の狭い思いをしているとパパは思っていたのだ。
それは全く的外れな心配だったけど、わたしはその大学を喜んで目指した。女子大には珍しく、保育や家政とかでなく学術的な専攻科が多いのが気に入った。
社会学を専攻できる学部を、わたしは選んだ。新聞や雑誌でニュースを読むのが好きな自分には、きっと合っていると思ったのだ。
でも大学生活は、しっくり来なかった。
1年生のゼミは30人ほどで、全くまとまりがなかった。派手な雰囲気の子とそうでない子に分かれ、派手な子は皆似たようなミニスカートを穿き、似たようなプラダの黒いショルダーバッグを持って、気だるそうに教室に陣取っていた。
ゼミリーダーになったのは、サトウさんという複筒の学生だった。いつも地味なチノパンを穿いて、おしゃれとは程遠い人だった。
しかし彼女は、そんなことまったく頓着しないとでもいうように、いつも声がよく通り自信満々だった。似た雰囲気をした彼女のシンパが2,3人おり、彼女らはいつもゼミで声高に発言をしていた。
派手なプラダさん達は、それをいつも冷ややかに見下した。他の地味な学生たちは、おどおどと見守っていた。わたしはどこにも属せなかった。
可愛らしくてスパイシーな、高校の親友のサヤカのような子はどこにも見当たらなかった。
入学から3か月ほど経ったある日。ゼミで、何かテーマを決めてディスカッションするように、という課題が出た。
「女性下衣選択法と、女性の権利について」
提案したのは、もちろんサトウさんだ。
ディスカッションが始まり、彼女は声高らかに話し始めた。
「私達が中学生の頃、女性下衣選択法が施行されました。皆さんはどういう動機で、単筒もしくは複筒を選択しましたか?」
そこまで言ってサトウさんは、まるで法廷の弁護士のように教室を見回した。
つづく