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〈小説〉スカートとズボンの話 #17

 そんな話をしているうちに、ヨシカワがタバコを買って席に戻って来た。
 皆がワイワイと騒ぐ中で、料理に手も伸ばさず、ひたすらタバコを吸っては焼酎を飲んでいる。

「ねえ華ちゃん、1人暮らしどう? お店の近くに引っ越したんでしょ」
 サヤカがわたしに話を振った。わたしは、1人暮らしを始めたのだ。

 サヤカが、華ちゃんのお店知ってる? 吉祥寺のmer bleueだよ、有名なんだよ、とやたらに持ち上げるので、わたしは少し居心地が悪くなったが、幸い皆の反応は悪くなかった。mer bleueはおしゃれが好きな女子にはよく知られる存在になっていた。

「ねえ、ヨシカワも吉祥寺じゃなかった?」
 誰かに言われ、え、とヨシカワはふいをつかれたようにこちらを向いた。こちらの話は聞いていなかったのだろう。芋焼酎のボトルは、残りがもう半分以下だった。


 帰り際、わたしはヨシカワをつかまえて声をかけた。
「ねえ、吉祥寺に住んでるの? 今度ご飯か飲みに行こうよ」
 え? うんいいよ、行こう行こう、とヨシカワは頼りない口調で答えた。

「女子だけじゃ入りにくい店があってさ。つきあってよ」
 うんうん、と頼りない様子でヨシカワは答え、わたしたちはメールアドレスを交換した。絶対記憶ないな、とわたしは思った。何しろ、1人でほぼ1本、芋焼酎のボトルをあけている。

 高校を卒業してから何度も会ったわけではないけど、ヨシカワの様子は明らかにおかしかった。最初こそサヤカに軽口を叩いていたが、その後はほとんどろくにしゃべらず食べもせず、酒とタバコばかり口にしていた。

 ナカムラの話も気になった。自分が力になれるとは思わなかったけど、とにかく心配でほっておけなかったのだ。



つづく

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