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❇️Good music❇️ スガシカオ 〈愛について〉〈サヨナラ〉ピュアで鋭い歌詞の世界は、考察するほどに怖い。
愛について(1997)
寒い冬の夜に、聴きたくなる曲。
どことなくわけありげな二人。先のこともわからず、途方にくれたように寄り添う様子。
澄みきっていてピュアで、いつでも孤独と隣り合わせのような、スガさんの世界が光っている。なんといってもあの「夜空ノムコウ」の詞をかいた人。
とても好きな歌詞がある。
♪ 夜がきて あたたかいスープを飲もう
♪ 明日もきっと また寒いから
コーヒーでもミルクでもなくスープ。寒い夜の二人に、あたたかいスープ。なんでこんなに沁みるんだろう。
サヨナラ(2003)
スガさんの詞のピュアさ孤独さ、冷たいほどの鋭さ。それがよくわかる作品のひとつが「サヨナラ」。
2003年2月リリース。ちょうどこの頃私は、2年ほどおつきあいした男性にふられた。「サヨナラ」はリリース直後で、ラジオでよくかかっていた。
この曲の歌詞が、まるでその男性から言われているみたい、と思いながら、何度も聴かずにはいられなかった。
20年前、ミレニアムの頃。景気は決してよくなかったけど、世の中は、今よりもっとお気楽なムードがあった。社会に出たばかりの私は、仕事もプライベートも、今思うとアラだらけだった。でも周囲に可愛がってもらい、さまざまなことを大目に見てもらっていた。
それで物事がうまくいって、それも自分の力だと無邪気に思えたのは、若さだったのかもしれない。
「サヨナラ」の歌詞の「ぼく」と「君」は、どういう二人だったんだろう。何かの違和感をごまかして、一緒にいた二人。「ぼく」はそれに気がついて別れを告げようとしている。
だけど「ぼく」はとても冷酷だ。その違和感を伝えて「君」と歩み寄りたい、という気持ちはない。君はそういう人なんだよね、もういいよ、とでもいうように、理由さえ告げず去っていく。
私とお別れした男性も、そういうところがあった。1年以上、立ち直れなかった。たった1年だし、おつきあいした期間も、今思うとたったの2年だ。でも20代の頃の1年、2年は、案外重い。
男性はロマンチストで鈍くて、女性は現実的で勘が鋭くて何でもお見通し、みたいなことがよく言われる。でも実際そうとは限らなくて、鈍い女性もいれば、この曲の「ぼく」のように鋭く、違和感を見過ごせない男性もいる。
そんなスガさんの詞の世界はとても魅力的で、でもやっぱり、今でも少し怖い。