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夜からの手紙(410字)【毎週ショートショートnote】

朝起きたら、夜から手紙が来ていた。

「次回の夜は、19時から。平服でどうぞ」
次回も何も、前回を知らないけど。


何、着ていこう。
「平服で」は「それなりにお洒落して」と読む。

秋に着たかった、グレーのやわらかいニットワンピース。カジュアルすぎずちょうどいい。

でもこれだけじゃ、少し寂しいかな。

クローゼットから、ストールを出した。
フューシャピンクを濃くしたような深紅。ワンピースのグレーによく合う。

これでよし。


安心して足元を見ると、ペディキュアがはがれていた。ターコイズ色の夏仕様。慌てて取って、9月に買ったボルドー色のネイルを塗る。

塗り終わって気づいた。もう10月で、サンダルなんか履かないのに。

でも、ちょっと悪くないかも。見えないところに、こんな可愛い色が仕込まれているのも。
そう思いながら、8センチのヒール靴をひっぱり出す。


18時58分、玄関ベルが鳴る。夜が迎えに来た。

わたしはストールにくるまりヒールを履いて、ドアを開けた。


〈おわり〉


たらはかに(田原にか)さんの企画に参加します。

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