バブリーOLはいつ消えた?#3〈1994年〉コンサバって、なんですか?
今回の参考資料は「JJ」1994年3月号。
※下記リンクから、表紙が見られます
「春」ニュートラ・ニット再び
「ニュートラ」という、かつて(80年代前半)JJが流行らせた用語を引っ張りだして、新しいファッションを提案しています。
提案されているファッションを見ていろいろ気づくこともありますが、
とにかく気になるのは
記事の中で「コンサバ」という言葉が連呼されていることです。
「甘さを消したコンサバリーダーたち」
「コンサバ派の選ぶ服が変わってきました。いかにもの可愛らしさではなく……」
「辛口コンサバ派の学生をスナップ」
コンサバ。
コンサバティブ、保守的の略。
90年代後半以降も繰り返し聞かれ、私もよく使っていたファッション用語です。
でも「コンサバ系って何?」と聞かれると、いまいちよくわからない。
ゴージャスなのか?控えめなのか?
男性的なのか?女性的なのか?
バブリー系やギャル系のように「こういう格好」とはっきり言えない、
「なんとなくきちんとしてる」のであれば、それはコンサバ、みたいな。
ギャル、黙殺される
この特集、というかこの号を読んで私は
JJ、ギャルを黙殺したな。。
と思いました。
だって、93年に取り上げられていたギャルファッションがどこにもないのです。
1994年、ギャルは既にスルーできる存在ではなかったはずなのに。
(これは「まとめ」に詳しく書きますが、私の経験上間違いないことです)
目立ちに目立って若干ヤンキー化していたギャルを、JJは取り上げないことにしたようです。
そして、なんだか定義は曖昧だけど、
とにかくうちは、コンサバで行きますから!
という強い意思を、この特集から感じたのでした。
先輩も新人も「OLスーツ虎の巻」
92年93年に引き続き、スーツ選び指南の記事。
前年よりさらに細分化し、専門的になっています。
細分化というのは、業界ごとのタイプ分け。
ここでは業界名をあげるのは控えますが、
お堅め業界は、シンプルなスーツ。
色はベージュ、グレー、紺
形はテーラード、ノーカラー
ボタンなどのパーツもシンプル。
この時代以降も着られていたような、
おしゃれ感はありつつ実用的なものです。
華やかめ業界は、華やかなスーツ。
水色、黄色など鮮やかな色、
ツイード素材あり、おなじみヴェルサーチ風柄あり
金ボタンやビットのようなパーツなど、ディテールも華やか。
華やかめ業界の見出し文が、強烈。
「社内結婚につながる彼の目に止まる」。
もう少しオブラートに包もうよ……
と言いたくなります。
思うに、これは業界の違いというより
総合職、一般職の違いなのでは?と。
ちなみにこの頃
既に就職氷河期に突入し、一般職採用は激減していたはず。
(一般職だけではないですが)
これまでのJJの誌面をみると、ターゲット層は明らかに一般職OLでした。
でも今後その層は減っていく。
それを見越してか、
寿退社を目指すOLだけでなく、仕事を続けていく総合職等の女性もターゲットにし始めたのかな、と感じました。
でもその二項を比較すると角が立つから
業界の違いと言い換えた……?
なんて深読みをしたのでした。
それにしても、あれこれ調べてみると
当時の一般職OLというのは、特有の困難を抱えていたのだなと。
これもまとめに詳しく書きますね。
ともあれ、新たなターゲットに向けた誌面作りが始まったのだな、と感じた記事でした。
新顔・春のお手頃靴/才色兼備の新世代ブランドBAG
靴の紹介記事と、バッグの紹介記事が続きます。
スーツ特集の流れを受けるように、
値段も機能も現実的で
「普通に通勤に使えそう」なアイテムが紹介されています。
靴は、
かねまつ、ワシントン、DIANAなど
良質ながら、働く女性の手が届きやすいブランド。
バッグは、セリーヌ、フルラ、マリクレールなど3万円前後のもの中心。
決して安価ではないですが、現実的な価格。
A4書類は入らなさそうですが、シンプルで、通勤に便利そうなデザインです。
(90年代、A4の入るおしゃれなバッグはそうなかった記憶…)
当たり前の記事、と思いますが、
これは92年4月号、93年2月号にはなかったものでした。
通勤コーデのモデルはいつも、ハンドバッグを持っていたのです。
本当にこれで、通勤できるのかな。
サブバッグ使ってたんだろうか…
と疑問だったんですよね。
やはりこれも、ターゲット変化を感じさせる記事でした。
検証 これがカルソンズ!
うわぁあったな、カルソンって!!
この記事を開いた途端、叫びました(心で)
同年代の方なら、ご存じでしょうか。
かつてのスパッツがレギンスと呼ばれるようになるその前に、
カルソンと呼ばれる、似た物があったこと……
(私は、20何年ぶりに思い出しました)
ジャージー素材でやわらかめ
肉厚で脚の線を拾わない、
エレガントな印象なのがカルソンでした。
コーディネイトはもちろん、
大きめトップスと合わせる!の一択。
靴は、ヒール部にボリュームのある、ショートブーツやミュール。
長めトップスに、スリムフィットボトムス。
とてもバランスがよくて、簡単におしゃれにみえるコーディネイト。
2020年代の現在も、ロングワンピース+レギンスパンツ、など微妙に形を変えながら、すっかり定番化しています。
ちなみにカルソンのNGコーデというのが、イラスト付きで紹介されています。
「渋谷にいるキャピキャピコギャル系」と題され、横に解説。
いわく、
「ハイビスカス柄のようなトロピカルカルソンはダメ」
「水虫ができそうなモコモコ付きのブーツはダメ」
「顔から浮いているショッキングピンクの口紅はダメ」……
悪意を隠そうともしない、これでもかのギャルdis。
さっき書いた「ギャル黙殺」説への自信が、確信に変わった私でした。
まとめ
ギャル台頭、だったはずの1994年。
私はこの頃、大学受験でした。
地方の高校生でしたが、私も友人達も東京に受験に行き、
茶髪に青みピンクのリップ、超ミニスカートの同世代女子達を目の当たりにし、衝撃を受けました。
そんな経験もあって、JJがギャルファッションを取り上げないことに、意図的なものを感じたのです。
当時の街の様子を知りたくて、JJというひとつの雑誌を頼りにそれを調査していますが、
雑誌にはそれぞれのカラーがあるというか、自分たちが理想とするファッションを載せるわけです。
それは時に、実際の街の様子とは隔たりがあるよなぁと、この調査の限界を感じたりしました。
それでも、時代の変化を感じることもできました。
(ファッションの話からは外れるのですが)
一般職、総合職のくだりを書くにあたって
この頃の就職状況、女性の総合職、一般職の成り立ちを調べ、
この時代の女性たちの味わってきた困難について知り、あれこれ考えました。
(自分と数年しか変わらないのですが、やはり違うんですよね)
総合職は、現代と同様、家庭との両立に悩む。
いっぽう一般職は、寿退社前提のモデル。
キャリアを積む前提の職層ではないので、退社せず長く会社にいるほど、居場所がなくなる。
今回読んでいるJJにも、読者の対談や投稿など軽い読み物があり
そこで「お局」が悪しざまに言われたりします。
女性差別の構造の中で、なぜか女性が同じ女性を追い込む、ということがままあるのですよね。
寿退社を狙うOLは楽をしたかったのではなく
それ以外の道は、ほぼ八方塞がりだったと。
そう考えると、この号で見た
「社内結婚につながる彼の目に止まる」
を笑えなくなります。
とにかく、女性の働き方が新しい局面に入り
より実用的なファッションが必要とされることで、バブリーの存在感が薄くなってきたのだな……
と感じた1994年でした。
次回は、1995年。
ファッションというより社会的に、大変革が起きた年です。
どんな影響があるのでしょうか。
それではまた!
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