タバコ嫌い
たばこが嫌いだ。きらいというよりも、憎んでいるといってもいい。
嫌煙家の何人かがそうであるように、僕も以前は吸っていた。18のときに吸い始めて、かみさんが妊娠したのを機にやめた。
たばこをやめてから立ち上がってくる、あのたばこの臭いのすさまじさよ。
喫煙者だけが気がつかないあの激臭。
ほんとに驚くんだけど、自分の臭さにほんとにほんとに喫煙者のときって気づいてないんだ。
あれには驚いた。
たばこ吸ってない人に、
「すごいくさいよね?」
と聞くと、みんな口を揃えてめちゃくちゃ臭いっていう。
びっくりした。だってぼくが吸ってたときはだれもそんなにはっきり言わなかったんだから。みんな気をつかってくれていたんだな。
というか、おなじグループの仲間として見られてなかったんだなとも思う。
こんなくさいものをからだを壊しながら吸っていたのだと思うとぞっとする。
たばこ吸って酒飲んでいる人は、早くとっとと死ねばよい。まじで。臭いし。
葉巻もだめ。臭い。
たばこの臭いが染みついたバーなんかに飲みにいくと、驚いたことにパンツにまでたばこの臭いが染みついてしまう。
もうホラー映画みたいな感じに思えてくる。
もう、床やら天井やら壁やらに染みこんだヤニが、静かにやってきて悪さをするのだ。
これ、昔だったら妖怪の仕業になるような現象である。
たばこを吸わなくなると、たばこ吸ってる女性がNGになってくる。
女性が吸ってるのも、気持ち悪く感じてしまう。
自分もプカプカ吸っていたのだから、勝手なもんだけれど。
店中にヤニが染みこんだ店に飲みに行ったら、飲んでいる最中に、体にうっすらヤニの膜みたいなのが張ってくるのがわかる。
産毛の上に、たばこのねっとりとしたものヤニががうすーく降り積もっていっているのだ。最悪。こんなことわかりたくなかった。
飯もまずくなる。当たり前だ、あんな臭いもんをかぎながらうまいもんなんか食えるわけがない。
一番おそろしいのは、それが喫煙者にはわからないことだ。
あんなにくさいのに!わからないことがおそろしい。
ヘビースモーカーの人でおれはグルメだとか言う人がいても信じないようにしてる。
あの刺激臭の中で味なんかわかるわけないじゃないか。
昔バーテンをしていたときに、変なウエスタンみたいなかっこしたおっさんがたまに来ることがあった。
やたらと饒舌なこのおっさんは、ウィスキーが好きでいろんなバーでうんちくを垂れ流しながら酒を飲む、うんちくウィスキーおじさんだったんだけど、強い酒のつまみにはたばこが合うということでやたらとたばこ吸っていた。
ハードリカーとたばこが合うっていうのはわかるけど、くせぇしそんなんで細かい味がわかるわけないだろうって思いながら。
お酒好きな人は、喫煙者が多い。
そうじゃない人だってたくさんいるけれど、酒飲んでウダウダしたいアラフィフは未だに紙巻きたばこ吸ってる。
たぶん独身だから、その辺のアップデートをする必要がないんだろう。
くせえくせえ。
せめて電子たばこにしてくれよ。