コップのポカリは高熱の夜
暑い。とにかく暑い。あつくって仕方がなくて、暑いと言ってしまうのも憚られる。
連日テレビからは、危険な暑さになるからご注意をと毎日言われている。
危険な暑さならもう全部休みになってくれ〜!と嘆いて毎日会社に向かう。
もっぱら夏が苦手で、太陽の下にいると熱が体に溜まってしまって脳みそが沸騰したようにぐらぐらしてしまう。
何にせよ今年の夏は取り分け厳しいように感じる。
何をしても汗、日差し、吹く風は熱風。
汗を流すために風呂に入るも、ドライヤーの風でまた汗をかく。
風呂上がり、茹でダコのようになりながら、氷を入れた大きいグラスにポカリを注いで一口飲んだ。
瞬間、知ってる味だと思った。
わたしが小さい頃はしょっちゅう高熱を出していて、夜中おでこにあたる母の手の重みで目を覚ました時、母親は必ず、大丈夫かとたずねてはコップにたくさんの氷の入れたポカリを飲ませてくれていた。(氷があるのとないのとでは全く別物だ)
すっかり忘れていたけど、これはまさにあの夜たちの味だった。
熱を出すのはとてもしんどいことなのでもちろん好きではなかったけど、全力で甘えられるあの時間は悪くなかったなあ。
もうすっかり大人になって高熱をだすこともなくなってしまったけど、人間、意外と味とかにおいを覚えてるものなのね、と茹でダコの体からしゅわしゅわと熱が抜けていった。