「1日8時間、週40時間労働」 根拠なき習慣を、いつまで続けますか?
1日8時間、週40時間の歴史を、ざっと
18世紀半ば、イギリスで、今の資本主義経済の原点である産業革命が起こります。工業化によって、それまでは、農業や手作業であった労働が、工場で機械を操作する作業に移り変わっていきました。様々なものを、工場で大量に生産できるようになったのですが、当時は自動化などない時代。労働力=生産量と考えられていたため、生産力を上げるためには長時間労働が必然でした。しかし、さすがに、労働者は黙っていません。19世紀には労働時間短縮の声が高まり、やがて「8時間労働」を勝ち取ったのです。
1919年、国際労働機関ILOは「工業的企業に於ける労働時間を1日8時間かつ1週48時間に制限する」とする労働時間(工業)条約(第1号)を定めました。
しかし、日本は批准しません。労働時間の制限は、生産力の制限に直結します。時は大正、まさに第1次世界大戦終結翌年です。大戦で勝利をおさめたイケイケ状態の日本は、労働者の処遇よりも、軍備増強を優先します。労働時間を“たった”8時間に制限されては困る、とゴネたのです。当時、日本には、労働基準法の前身となる「工場法」がありましたが、15歳未満(後に16歳未満に改正)の者および女子についてのみ、最長労働時間は12時間(後に11時間に改正)、と定められていたのみでした。
1947年、日本はようやく「1日8時間、週48時間の労働時間」とする労働基準法を制定します。第2次世界大戦に破れ、もはやイケイケではありません。GHQ(連合軍総司令部)にそうしろと言われたから、そうしたのです。その後、昭和の終わりから平成にかけて、徐々に週休2日制の導入が進みます。
「8時間」の根拠とは?
8時間ではなく、6時間や7時間ではだめですか?(希望は3時間ぐらいですが)
産業革命期、労働者から労働時間短縮の声が高まりました。この時、労働時間は何時間が合理的なのかを、様々な国の様々な人が、実際に試しゴニョゴニョした結果、「8時間が最も効率が良い」、となったのです。前述の通り、今から100年以上も前の話しです。
確かに、当時はそうだったのかもしれません。そして、1日16時間といった長時間労働を強いられていた人々にとっては、相当な救いになったことでしょう。
「週40時間」の根拠とは?
まず、1週間=7日には、色々な説があるようです。
月の自転・公転周期約27日=1か月を、4当分して7日=1週
神様が6日間で世界を創造し、7日目に休んだ=1週
この根拠は正確にはわかりませんが、正直、何でも良いです。一週間は、7日なのでしょう。大昔から、そう決まっていることは確かです。
しかし、週7日であっても、労働のルーティンは無関係に設定できたはずです。4勤1休や、2勤務1休3勤1休、あるいは完全に変則的でも良かったのです。週40時間(週休2日)の以前は週48時間(週休1日)で、この6勤1休がピッタリ後者に一致するため、神様の働き方が「週40時間」の根拠になっていると想像できます。
つっこみどころ満載
「8時間が妥当」は、100年以上前の工場の、単純作業の話し。現代の業務は大きく異なります。非工業的な業務の話は、一切されていません。
「週40時間」の根拠は、神話であると推測できますが、明確ではありません(神様は、7日目に休んで、翌日から別の世界の創造にとりかかったのでしょうか?)。
つまり、今、1日8時間、週40時間働くことに、まったく合理的な理由はないのです。
殊に、事務業務などの労働時間の妥当性は、はなから議論も検証もされていません。
これで、今が妥当だと言えますか?電卓が誕生し、高速で正確に計算ができるようになっても、パソコンが普及し、様々な集計が自動的できるようになっても、AIが実用的になっても、労働時間が変わらないのは、おかしな話しではありませんか?
ちなみに、日本の労働力人口は、女性や高齢者、外国人の労働参加によって増加傾向にあります。
なぜ、改善されないのか?
「なんで1日8時間働くのだろう」、という疑問が湧くのは当然でしょうが、それが日常で、もはや疑問すら抱かなくなっている人が多いのかもしれません。疑問に思ったところで、社会の仕組みがそうである以上、変わらないのではないかと考える人も、少なくないのかもしれません。
これだけ産業構造が変化しても、労働時間にはなんら影響していません。
テクノロジーの進化は、間違いなく業務の合理化・高度化に寄与してきましたが、労働時間は短縮されていません。
同様に、業務改善によって業務の合理化・高度化を図ったとしても、同じように労働時間の短縮に繋がらないのかもしれません。
こんな諦めムードが漂っているのが、今の日本の実情ではないでしょうか。
昨今、「週休3日」を導入する企業も増えてきているようです。しかし、休日は増えても労働時間は減らない、労働時間が減ると給料も減る、このような策は、企業側にはそれなりに正当な理由があるのでしょうが、厳しく言ってしまうと、改善ではなくパフォーマンスです。逆に、改善意欲を喪失させてしまう恐れすらあるでしょう。関係者誰もが恩恵を受けられる、本気の業務改善を進めましょう。
労働の時間だけに着目し、今までがそうだったからといって、それに準ずるように、わざわざ仕事を増やすことこそ、まさに無駄ではないでしょうか?