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【ちょっと一息 ブレイクタイム】 上と下と偉い・偉くないの話

 上下関係って、右左関係ではだめですか?上は偉い?そもそも偉いって、どういうこと?

 この、奥深い謎に迫ります。

色んな上下① 年上・年下

 年齢が多いか、少ないかだけで、年の数が多ければ上、少なければ下ということではありません。

 キーボードのテンキーは数が多い方が上になっています。カレンダーは数が多い方が下になっています。

 年長者を敬うことは、上下関係ではありません。「じじい」と「赤ちゃん」、どちらが上ですか?

色んな上下② 上流工程・下流工程

 ウォーターフォール型開発モデルのように、要件定義・設計・開発・テストの開発工程を、流れる水で表現してしまうと、「上流」と「下流」ができてしまいます。

 これを水が蒸発する様で表現すれば、逆になります。

 つまり、その役割自体には、もともと上も下もありません。

色んな上下③ 上司・部下

 ヒエラルキー型組織の組織図で、上に書いてある人が「上司」であり、下に書いてある人が「部下」です。

 組織図をひっくり返して逆三角形にすれば、「下司」と「部上」になります。

 従って、これも役割自体には、上も下もないと言えるでしょう。

そもそも論「上は偉い?」

 「上が偉いわけではない」は、背理法で簡単に証明できます。

  • 上が偉いとするなら、上水道は下水道より偉いということになります。

  • 剣道では、上段の構えは下段の構えより偉いということになります。八相の構えが上段の構えより偉いのかどうなのかは判断できません。

  • 地図は通常北を上にして書かれているため、日本で一番偉い都道府県は北海道、ということになります。

  • 上田さんは、下田さんより常に偉くなります。

 「上」が偉いわけではないですが、なぜか人は上を偉いと思いたがる傾向にあります。ある種の“錯覚”とも言えるでしょう。上昇=正、下落=負という感覚に基づいているとも考えられますし、上へ上へと行きたがらせるような何かがあるのかもしれません。

 「天高く舞い上がり、宇宙の果てまで」とは思いますが、「地中深くに潜り込み」とは、あまり思いませんよね。

 人は本質的に上に憧れ、上に尊さを感じるのかもしれません。それには、上昇には重力が影響する物理的な難しさや、宗教的なものが影響している可能性もあります。

 ところで、本当はどんな人が偉いのでしょうか?

偉い人の例① 偉人

 偉人と呼ばれる人はたくさんいます。アインシュタイン、ウォルト・ディズニー、徳川家康、私は大谷翔平さんや、小澤征爾さんも偉人だと思っています。

 だいたい、すごい人です。偉い人だと言えるでしょう。

偉い人の例② ・・・

 残念ながら、偉人以外の偉い人を、考えられませんでした。

 考えてみれば、偉い人すべてが偉人なのですから、当たり前ですね。

 となると、年長者も、上流工程SEも、上司も、そうだからと言って偉くはない、ということになります。

 人によっては偉人と捉えられる上司もいるでしょうが、年上であること、上流工程を担当していること、上司であることなどは、イコール“偉い”とはならないのです。

 一方で、世の中には、偉いと「思われている」人はたくさん存在します。

偉いと思われている人の例① 命令ができる人

 命令ができる人は、偉いと思われがちです。絶対従わなければならない命令、ともなれば、なおさらでしょう。

 しかし、偉いから命令ができるのではなく、命令する役割なだけです。偉い人にだけ与えられる権力はありません。

偉いと思われている人の例② お金を払う人

 お金の流れで、払う人が偉い、という感覚があるようです。

 「お客様は神様」かどうかは知りませんが、仮にお客様が神様で、神様が偉いとしても、わけの分からないクレームを付けるような存在は偉いとは言えません。

 だいたいお金は対価として支払われますから、お金を受け取った側は相応の何かを提供しているはず。対等な関係です。最近は何もしていないのにお金を配ってくれる人もいるようですが、お金をたくさん配ったからと言って、偉人ではありません。

偉いと思われている人の例③ 学校の先生

 教える職業の人です。先生と呼ばせているだけで、教員です。

その他、偉いと思われている人の例

 政治家…政治家だから偉い、わけではないと思います。政治活動の成果によっては、偉人になりやすいかもしれません。

 医師…尊いお仕事をされているため、敬うべき人ではありますが、必ずしも偉人ではないでしょう。政治家と同じく、偉人になりやすい方々です。医師と(お金を払う)患者は、どちらが偉いのか、という議論が必要です。

 誰もが知る実業家や社長…まちまちでしょう。偉人と呼ばれるようになる方もいますし、そうでない方もいます。

 起業して大成功した、お金をたくさん持っているなど、何かしらのステータスがあると、偉いと思われることが多いようです。偉いと思う人にとっては、実際に偉い人なのかもしれません。それぞれの主観によります。

 これは決して間違いではなく、むしろ人を敬うことは良いことです。偉いと思う人は、人それぞれなのです。

年上、上流工程、上司が総じて偉いと思われるカラクリ

 これは、“ある種の輩”が、「上が偉い」と感じる人々の“錯覚”を利用して、偉いと思わせていると考えられます。

 自分を偉く見せるために、意図的に“錯覚”を利用していると言えます。

 本当に偉くなるためには、人並外れた業績を挙げ、それが客観的に評価され、尊敬される必要があります。そう簡単にはできません。

 しかし、「上が偉い」という錯覚を利用すれば、自分が上であることを示すだけで、何の業績がなくても偉く思わせることができます。そのためには、左右関係でも東西関係でも紅白関係でもなく、「上下関係」にする必要があります。

 「オレは上司だ」

 と言えば、上司→上→偉い、と思わせることができます。でも、もし組織図が逆三角形になっていて、

 「オレは下司だ」

 はぁ?、ですよね。

 この「はぁ?」が本来の姿なのです。「オレのほうが年上だ」ではなく、「オレの方が早く生まれた」…と言われましても…。はぁ?

 こうした“ある種の輩”は、何らかの目的で自分を偉く見せようとしています。その目的は明確ではありませんが、偉くなれば権力やステータスが得られると、勘違いしているのかもしれません。

 まさにパワハラの発想です。

まとめ

 このように、上か下かと、偉い・偉くないは別物です。

 そして、偉いからと言って、何かしらの権力が与えられるわけではありません。

 “ある種の輩”が「上は偉い。偉い人には従わなければならない」という人々の錯覚を利用して、自分を権力者に見せようとします。

 ところで、「偉い」の反対語はありませんよね。

 これは「偉い」が、相対的な指標ではなく、絶対的な状態であることを示します。ですから「あなたより偉い」と、いうことはそもそもおかしいのです。もし言うならば「私は偉い、あなたは偉くない」です。同時に、「偉い」は客観的に得られるステータスであるため、「私は偉い」と言うものでもありません。

 偉人と呼ばれる人や、本当に尊敬される人は、「私の方が上だ」とか「私の方が偉い」とか、言いません。そう言っている時点で、その人は偉くないと判断して良いでしょう。「自分は偉い」と言うのは勝手ですが、本質は偉くないから、そう言う必要があるのです。偉く見せたいだけ、実に面倒くさいのです…。

 言うまでもありませんが、業務において、このような「上か下か」、「偉いか偉くないか」を議論するのは無駄です。それぞれの役割を、合理的に果たしましょう。


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