っすね
海岸沿いの国道を進めば左手に廃ホテルがある。天使の舞うオーシャンビューの中に不気味に佇むそれは、近づき難い雰囲気を醸し出しているがその場所に不釣り合いと言うわけでもなく、ごく自然でありきたりな印象すら与える。
海に用事なんて無い。助手席でプラコップに入った混ぜ物だらけの酒を片手に無意味に波打つ夜の海を見つめる。激しく脈打つ脳味噌は月暈の美しさや窓が夜を弾く残像にしか意識を向けない。さっきまで初めて行くクラブに忍び込んで他の客の飲みかけの酒でドリンクバーをやってたはず。聴きたくもない電子音をかき分けて君を見つけたんだっけ、忘れてしまったけど。車内は身体中から溢れるアルコールで酷い匂いになっていた。煙草はもう無い。海に用事なんて無い。
車内で流れていた音楽は止まって月暈のような電灯ばかりの駐車場で車は次の指示を待っている。車窓と夜は強かな友好関係を結んでいた。
周囲の空気も読まず装飾に装飾を重ねポエティックに書くと人間の一生なんてこんなもんで、裸足で歩いてた時期を忘れてサイテーな日々を送ってるだけ、もしあなたが地獄みたいな装いで歩いてたとしても、この薔薇色の世界じゃ埋もれてしまうくらい普通なのかもしれないっすね。
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