歩く夏燃える少年

午睡の後、歩くアスファルトのまぶたは限りなく重く溶ける。

下校中の小学生の一群を前に、汗で強張った髪をかき上げながら歩く。「ドイツはいま夜だよ」黒いランドセルをこちらに向け、後ろ向きになりながら学友へ話しかける少年が、そんなことを言っていた。習いたての時差のことを振り返ってでも友達に披露したい、そんな、幼心の純粋な美しさに永遠を感じつつ太陽に隠れて歩く自分。ランドセルの向こうの少年の目はきっと夏の太陽より輝いていたのかも知れない。

「けどね、少年、今の時間のドイツは朝なんだ」
こんな、余計な知識が邪魔をしながら、寝起きの俺は、寝てる間は夜だから今の俺は朝だよと心の中で思った。

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