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杜子春

皆様、こんばんは。
今週は陰山です。

今年でブログを始めて4年目に入りました!
いつも見てくださっている方も、本日初めて見てくださった方も、スキを押してくださる方も、コメントくださる方もありがとうございます。
4年目もどうぞよろしくお願いいたします。

子供達の相手をするにも体力の衰えを感じ、少し前からランニングを始めました。
以前は音楽を聴いていたのですが、最近はYouTubeで短編小説の朗読などを聞いています。
先日は芥川龍之介の『杜子春』と共にランニング、懐かしい話に耳を傾けていました。

少し物語の説明をしたいと思います。

財産を使い果たし、その日の住む所にも困っていた杜子春は、洛陽の西の門に佇んでおりまし た。
そこへ謎の老人が来て、
「夕日に照らされた自身の影の頭の所を夜中に掘ってみなさい、そこには大金が埋まっているだろう」と言います。
杜子春は老人の言う通りにして一夜にして洛陽一の大金持ちになりますが、贅沢三昧ですぐまた無一文になります。
再び老人が現れ、大金の場所を教えてくれますが、同じことの繰り返し。
再再度来た老人は、同じように大金の場所を教えようとしますが、「大金持ちになればもてはやし、貧乏になると見向きもしない」そんな人の薄情さに疲れ、杜子春は「もうお金はいらない」と言います。
そして、杜子春はその老人が仙人であったと気づき、弟子入りを申し出ます。
仙人は「何があっても声を出してはならない」と言い残し、どこかに行ってしまいます。
一人いる杜子春の元に、虎や蛇など様々なものが声を出させようと出てきます。
しかし、一向に声を出さないので、ついに神将に槍で胸を突かれます。
命尽き、地獄に行った杜子春は閻魔大王から名を聞かれますが、答えません。
痺れを切らした閻魔大王は、畜生道から杜子春の父母を連れてきて、獄卒たちに肉が割け骨が砕けるまで鞭でめった打ちにさせます。
仙人の言葉を思い出し、目を瞑り黙っている杜子春の耳に母の声が聞こえます。
「心配しなくていい。私たちはどうなってもお前さえ幸せになれるなら、それより結構なことは ない。言いたくないことは黙っておきなさい。」と。
その母の声を聞いて、杜子春は倒れている母を抱き上げ「お母さん!」と叫びます。
すると、いつのまにか洛陽の西の門の前に戻っています。
仙人が「どうだ、私の弟子になった所で仙人にはなれないだろう」と問うと、 杜子春は「なれません。なれませんが、私はなれなかったこともかえって嬉しい気がします」と答えます。
そして、人間らしい正直な暮らしをしていきますと宣言し、仙人は一軒の家と畑を与えて去っていきました。

というお話です。

いつこの話を聞いたのか、記憶が定かではありませんが、小さい時から好きな話でした。
なんとなく好きな話として覚えていましたが、改めてなぜ好きだったのか考えてみると、つまり親心が温かかったのだと思います。

杜子春は、自分のこと、また自分の置かれた境遇に悲観することしか考えていなかったのに、ふと亡くなった親の言葉が思い起こされます。
自分より子を先にする、その親心に気付いた杜子春に、自分を重ねていたのだと思います。
世間にも自分自身にも嫌気が差し、このいのちを虚しくしか見ていけなかった杜子春は、その親の心が届いた時自分のいのちの輝きに気づく訳です。

杜子春も両親も、どうやら地獄行きのいのちを生きてきたようです。
親が子を育てる時には、綺麗な選択ばかりではどうにもならない現実があるのだと思います。
親を思う子も同じかも知れません。
特別な親子の物語ではありません、親の子に生まれ、また子をもつ親となった私自身の話です。

阿弥陀仏は「お前を必ず仏にするぞ」と、迷い続ける私を想い続け、願い続けてくださっている仏様です。
好き嫌いなどと言ってはいけないかもしれませんが、私はそこが好きなんです。

それは決して私の煩悩を肯定してくださるということでもなく、都合よく私の味方をしてくれるという話ではありません。
むしろ日々嗜められることの方が多いように思いますが、嗜められつつも常にこの私を抱き取ってくださっています。

言わずもがな、現実は様々なことが起こります。
杜子春のように、その現実から逃げたり悲観したりしてしまう私ですが、そんな私に「そうじゃないよ、豊ないのちを生きてるのだよ」と、嗜めてくださる仏様です。

親が大切に思ってくれるから、私は私を大切に思える。
親が私を願ってくださるから、その願いは私の願いになります。
その願いと共に一日一日の日暮らしを送っていきたいものです。

余談ですが、この『杜子春』、元は『杜子春伝』と呼ばれる中国の古伝が元になっているそうで、 さらにその前を遡ってみると、玄奘三蔵の『大唐西域記』の中に出てくる鹿野園の「救命池の伝説」という話が元になっているそうです。

称名

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