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個人事業主と法律事務関係の専門職

 新型コロナ対策の持続化給付金から事業復活支援金までの手続で、多くの個人事業主さんと会い、お話をいたしました。
 それを通して改めて実感したのは、「『行政書士』という専門職は何を業務としているのか御存知いただけていない」ということ。

 そこで、今回は行政書士の役割について紹介します。

 といっても、行政書士の仕事って、一言でわかりやすくお伝えするのは難しいのです。(と、私は思っています)
 
 そういうわけで、個人事業主さんに関りがあるであろう法律事務関係の専門職をはじめに簡単に紹介し、最後に行政書士について御紹介します。

 ※それぞれの専門職の説明は簡略化しています。あまりにも不適切な文になっている場合には、御遠慮なくお知らせください。

■ 弁護士
言わずと知れた法律の専門職です。
法律に関わることなら、ほぼ何でも相談・依頼することができます。
(ただ、専門領域をお決めになっている弁護士もいるようです)
特に、他人と争いになっている場合や、最悪の場合には裁判も見据えるような交渉には、はじめから弁護士に相談なさった方が良いでしょう。

■ 税理士
個人事業主にとっては所得税の確定申告書や消費税の申告、それに伴う会計帳簿の記帳で頼りになる専門職です。
毎年1月~3月くらいは超多忙になる税理士が多いようなので、もし、新規に相談を申し込むならば、できればその時期は外した方が良いかと思います。
なお、普段は自分で帳簿をつけている方でも、開業して最初の確定申告や事業の法人化を検討する時、あるいは親族の事業を引き継ぐ時には、税理士に相談されることをお勧めします。

■ 社会保険労務士(社労士)
労働や雇用関係、社会保険、年金などの手続に関する専門職です。
新型コロナ感染症関係では、従業員を雇っている事業主の方であれば雇用調整助成金・両立支援等助成金・小学校休業等対応助成金の申請を依頼されたかもしれません。
報道を見ていると、雇用に関わる法制度の改正が頻繁になっているような気がします。ワークライフバランスだとか、ハラスメント対策だとか雇用主に求められることも多くなっています。
ですから、普段、社労士との付き合いがなかったとしても、常勤の従業員だけでなく、パートやアルバイトを雇う時あるいは辞めてもらう時には、必要な手続や注意すべき点についてアドバイスをもらった方がよいでしょう。
一方、最近よく報道されている、業務委託契約なのか雇用なのか微妙な関係のフリーランスと委託業者の問題については、社労士よりは弁護士に相談すべきだと私は思います。

■ 司法書士
 司法書士は、不動産や法人に関わる登記の専門家です。それだけではなく、裁判所に提出する書類の作成も業務の1つです。
 中でも認定司法書士は、1件の債務が140万円までなら任意整理も行え弁護士に近い役割を担えます。
 個人事業主にとっては、法人設立の時、あるいは債務が残っている状態で廃業を考える場合の相談相手になると思います。

■ 弁理士
 
特許出願の時の専門家として知られていますが、実用新案や商標、意匠登録も手掛けています。
 そのように紹介すると「発明」に関係する人だけに関りがあると思われそうですが、そうではありません。
 例えば、名刺や看板などに自分の事業のためのロゴとかマークとかを作ってないでしょうか?ロゴやマークは商標登録をすることで保護の対象になります。御自身が考えたロゴやマークの保護だけではなく、「他人のロゴをうっかり侵害してしまった」ということがないように、調べておく必要も生じます。
 そんな時に相談するのが弁理士です。

■ 通関士
 
通関士は、輸出や輸入に関するスペシャリストです。
 今年の国会で、経済安全保障に関わる議論が行われました。輸出の規制対象になる物品も、時の国際状況によって目まぐるしく変わることになりそうです。
 個人事業として行う少量の輸出・輸入であっても、時に応じて品目を変えることが多いなら、その商品が規制対象になっているか否かに注意すべきです。

★ 行政書士
行政書士の役割は、大きく分けて次の2種類です。

①官公署に提出する書類の作成と提出の代理
②その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)の作成

これでは何のことかわかりづらいですよね
②の権利義務・事実証明書類の例を挙げてみます。
 ・契約書、遺産分割協議書、離婚協議書、示談書
 ・法人の定款(ただし、設立や変更等の登記は司法書士)
 ・議事録
 ・会計・記帳(ただし、税の申告書類は税理士の業務)
 ・請求書、内容証明郵便
 ・官公署以外の機関に対する申請書など
その他に、日本政策金融公庫への融資申込の支援を行っている行政書士もいます。

ただし、離婚協議書や示談書などの作成で当事者の間に争いがある場合には行政書士は関わることができません。争いがある、あるいはほぼ間違いなく争いに発展しそうな時には、弁護士に相談すべきです。

①の官公署に提出する書類ですが、税理士や社会保険労務士、司法書士などの他の専門職の仕事とされているものは、行政書士は扱えません。
逆に言えば、それらの他の専門職にしか認められていない業務を除けば、すべて行政書士が関われます。

以上のように、行政書士は広範囲で業務が行えます。
ですから、私はお会いした方に、次のようにお伝えしています。
 「どこに相談していいかわからない時は、とりあえず行政書士に連絡下さい。もしそれが私にできないことであれば、他の専門職を御案内します」




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