もしアルバムの中に、思い出にない記念写真があったら・・・

旅行から帰ったら楽しみなのが、旅先で撮った記念写真。
その中に恐ろしい写真が交じっていたら。
今回はそんな写真の不思議なお話です。＊加筆再録

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「聖地巡礼沖縄の旅（思い出に無い記念写真）」

高校１年の時から付き合っている志郎とは、もう４年目になる。
最近ちょっと倦怠期気味だ。
どこへ遊びに行っても、新鮮味が無く、
高級なレストランもどこか味気なく感じてしまう。

私は、倦怠期を乗り越えるため、
スマホに残っている昔の写真を志郎と一緒に見返す事にした。

楽しかった頃を思い出せば、二人の関係も
良くなるかもしれない、と考えたのだ。

狙いは当たった。

「テーマパーク、安曇野のキャンプ、白馬のスノボも楽しかったね」

と、私たちは思い出を語り合った。
自然にボディタッチも増え、久しぶりに二人で明るく笑った・・・
最後の何枚かを見るまでは。

「何これ？」

それは沖縄の写真だった。
守礼門を始め、奇麗な海岸や、絶景の数々。
どの写真も、明るい太陽が眩しい。
そして、その太陽の下で、志郎と私が楽しそうに遊んでいる。

でも・・・

「私たち、今まで沖縄に行ったこと無いよね」

私は顔が強張った。志郎もスマホを覗き込んで震えてる。

どの写真も行った覚えが無い沖縄の観光名所だ。
それらの写真の中で私たちは笑ってる。

「心霊写真・・・かな」

普通、こんな事が起こったら、誰でも恐ろしくて
写真を捨てようとするだろう。

でも、志郎は違った。

彼は、その写真をじっと見つめると、いきなり言った。

「よし。行ってみよう！」

私は心霊関係は全くダメだが、
志郎はスピリチュアルなことや不思議な事が大好きで、
デートでも、真剣に心霊スポットなどへ行こうとする。
そんな彼が、こんな写真を見て、黙っていられるはずがない。

「え～。いつ？」

「すぐに。思い立ったら吉日だよ」

と言う訳で、私たちは週末に４日間の沖縄旅行に出かけた。

しかも、怪しい写真の場所に行って、写っている通りの格好で
写真を撮ろう、というのである。
もし本当に心霊写真だったら、さらに何か写り込むかもしれない。
というのが志郎の考えだ。

「これこそ聖地巡礼だね」

人の気も知らないで、志郎は大はしゃぎしてる。

沖縄に着いた私たちは、まず守礼門に向かった。
スマホに保存されている「心霊写真」と、
今実際に訪れている二人を見比べ、
指先までポーズを合わせて写真を撮ってみた。

「そっくりかどうか確かめてみようよ」

そう言ってスマホを見返すと、「心霊写真」の方の守礼門の写真が消えている。

「あれ？守礼門の写真だけ無いわよ」

「え～。そんなはずないでしょ」

志郎が見ても、前後の写真はあるのに、確かに守礼門の写真だけが無い。

「たった今ポーズを確認するのに見ただろう」

「だって、無いんだもん」

二人で何度もスマホの写真ホルダーを見直したが見つからない。
時間も無いので、仕方なく、私たちは次の目的地へ向かった。

次は星の砂海岸。
ビーチの砂を両手ですくって下に落とす。
そんなCMのようなポーズをして写真を撮った。

そしてやはり、このビーチの写真も撮影が終わると
「心霊写真」の方は消えていた。

その後も、新しく撮ると写真は消える。

「まるで写真の供養をしているようだね」

と志郎は言った。
もう彼の心の中では、そんな風にオカルト風の答えが出ているのだろう。

しかし、沖縄の中を回っているうちに、私たちは何だか楽しくなってきた。

心霊写真を供養する・・・そんな気持ちが
ポジティブな感覚を呼び覚ましたのかもしれない。
結局、この旅行がきっかけで、私たちは倦怠期を乗り越え、
お付き合いも５年目を無事迎えた。

スマホには、もう心霊写真は残っていない。

志郎は今でも時々、「本当に心霊写真だったら、
ちょっともったいない事したな」などと言ってる。

でも、心配する事はないわよ、志郎。

あなたは知らないでしょうけど、高校時代写真部だった私の写真加工技術は、プロ並みなんだから。
それに、沖縄の心霊写真だって、私のパソコンに元のデータが残ってるわ。
お望みとあらば、同じような写真は、いつでも用意してあげられるわよ。

でも、その前に・・・今度は北海道に行きたいかな。

私は北海道の観光サイトからダウンロードした札幌の時計台の写真に、
彼と私の笑顔の写真を合成した。

　　　　　　　　　おわり

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＊一部加筆修正。
このお話を作った後で、スマホの写真ホルダーに、料理の写真だけがあって、どこの何というお店だったか全然思い出せない、という事件が起こりました。結局その美味しそうな写真のお店は分からず、というか思い出せず、再訪は叶っていません。

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