「席」・・・超ショート怪談。よ~くその場面を想像してみて。
その病院の待合室には、誰も座らない席がある。
長椅子の一番端。
普通なら最初に座ろうとするはずの席だ。
その席に座ると、夏でも氷のように冷たく、
実際には乾燥しているのに、
しっとりと濡れているように感じるのだという。
「そんなのは気のせいだ」
噂を耳にした気の強いだけが取り柄の院長の息子が
噂を払しょくするために、診察を終えた後でその席に座ってみた。
「全然何も感じないぞ」
と強がっていたが、顔色が見る見るうちに青ざめていった。
しばらく座って立ち上がると、背中からお尻にかけて
白衣がびっしょりと濡れていた。
院長の息子は、そのまま待合の床に倒れ込んだ。
介抱しようと近寄った看護師たちにいよると、苦しそうな声で、
「ごめんなさい。ごめんなさい。許してください」
と何度も言いながら、震えて亡くなったという。
その後、その病院は経営が破綻し、
長椅子、リサイクル業者に引き取られて
今もどこかの病院で使われているという。
あなたの周りに誰も座りたがらない席はありませんか?
おわり
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