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「24分のX」:第17話  超ショートショートで連載小説

〇「24分のX」 短編よりも短い、あっという間に読める超ショートショートの連続小説。単独でも良いが、続けて読むとさらに伝わってくるものがある。


第17話

「もう少しだけ話していいか」

すがるように俺は続けた。

「課長の妻と、つまりあんたの不倫相手の奥さ・・・」

ここまで言って、きつい言葉を言ったと思ったが、
もう止められなかった。

「奥さん・・・あの女と話していたのを俺は見ていたんだ。
浮気相手に泥棒猫だと言ってやれ、
とかきつい言葉を並べていたよな。
だけどな、俺はあの時、不思議に嫌な感じはしなかった。
あの悪口に、なぜか優しさが感じられたんだ」

俺は短く息を吸い、目の前で聞いている女の横顔を見つめた。

冷たく白い頬が、沈み始めた夕陽を受けて赤く染まっている。

「あの時から俺は、お前から目を離せなくなった。
24時間、お前の事だけ考えるようになってしまった。何というか、自分をいばらの死刑台に乗せるような
凄味というか覚悟のようなものが伝わってきたんだ。
それほどまでに自分を追い込むのは、
相手の心を感じ取っているからに違いない。
悪役には成りきれない、優しさなんだ」

「随分と持ち上げるのね」

彼女は、すっくと立ちあがり
冷めた目を俺に向けながら言った。

「でも私、ものすごく面倒くさいわよ。
あなたにその覚悟があるのかしら」

             つづく


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夢乃玉堂
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