暑い時には涼しい話。

2024年8月24日 00:22

今日も暑かったですね。
エアコンの前から離れたくなります。

涼しくなれ、涼しくなれ、と願っているだけなら、
それで良いのですが、それが行きすぎると・・・

そんな、少しでも、涼しいお話を紹介します。

＊ラジオ版から、加筆修正しています。

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怪談「冬の部屋」　改訂版　作・夢乃玉堂

8月だと言うのに、ダウンジャケット。セーターとフリースの重ね着。
分厚い手袋。マフラーに目出し帽・・・

冬山登山に行く格好をして、父は炬燵で死んでいた。凍死だった。

その手に高山植物の花が握られていた、と検死した病院の医師が言っていたが、俺は、「昔、二人で山に行った事があります」と、
父と二人で行った雪山の思い出を話しただけで
特に不思議にも思わなかった。

結局は父の死因は自然死として片づけられた。

父が一人で住んでいたアパートの荷物整理をする為に、
ワンルームの小さなマンションを訪れたのだが、
一日ではとても片づけは終わらなかった。

仕方なく、この部屋に泊まることにした。
エアコンの無い部屋は、日が暮れても蒸し暑かった。

だが、時計の針が午前０時を過ぎる頃、
部屋の中が徐々に涼しくなってきた、いや、もう寒いくらいだ。
こたつの電気を入れ、ストーブも付けてみたが、一向に温かくならない。

さらに1時間が過ぎた。
今なら、父が冬山に行く恰好で炬燵に入って亡くなっていた理由が分かる。

なぜなら、数分前から部屋の中に雪が降り始めたからだ。
窓も扉も閉め切っている、隙間から吹き込んできたのではない。
この部屋の中で降っているのだ。

最初は、ちらほらと舞う程度だったが、
数秒後には吹雪に変わり、もう炬燵から出られなくなった。

助けを呼ぼうにも、気が付けば、雪は天井まで降り積もっている。

ああ。もう気が遠くなってきた・・・。

　　　　　　　　　　おわり

*一部改訂しました。

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