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「熱烈」・・・短編。映画に誘う時は、作品と相手を見極めなければならない。
和田君(18歳)は、同じ美大の彩子先輩(21歳)を
デートに誘う決意をしました。
入学式後のクラブ勧誘で声を掛けられ、
その色白で華奢な感じの佇まいにひと目惚れしてしまった同じ美術学部の彩子先輩。
和田君は、それまで1mmも興味の無かったアニメーション研究会に入り、熱烈なアプローチで彩子先輩との距離を縮め、ゴールデンウィーク前には、
和田君は自宅でDVDを見る約束を取り付けたのでした。
そこで和田君は、なけなしのお金を出して
当時、美大で話題になっていた作家性の高いアニメーション映画を購入、ネットで拾えるだけの情報を集め、準備万端その日を待ち続けました。
しかし意外な事に彩子先輩は、興味を示さなかったのです。
彼女は、自分の持ってきたSFアニメーション映画を見ようと言ってきました。
「美術学部なのに、芸術的な作品より、オタクなSFが好きなのかな」
と和田君はさらに好感を持ったのです、その時は。
ところが、いざDVDを見始めた途端、彩子先輩は、
「いい? ここ、このカットの動きよく見て。凄いでしょ」
「これ程複雑な渦巻、普通描けないよね」
「ここはダメね。こんな人間に出来ない動き、描かないで欲しいよね」
「ここここ、炎の動きがまるで生きてるみたいでしょ。さすが、○○さんだよね」
などと言って、1シーンごとに解説を始めました。
彼女は、作画監督から原画、動画のスタッフまで把握している、熱烈なアニメオタク。
この映画では、自分の大好きな作画監督が何カットか担当していたのです。
結局和田君は、2時間の間、知りもしない作画監督や
原画の人の話を聞かされ続けたのでした。
最後に、映画の感想を聞かれた時、
和田君は答えました。
「う~ん。余り楽しめませんでした」
皮肉を込めて答えたのですが、彩子先輩は。
「そうか~。やっぱり、あの人間の出来ない歩き方とかのせいだよね。ああいうのが、映画全体をダメにするんだよね」
そう言うと再びアニメ映画について語り出すのです。
和田君はそれを聞きながら、
『アニメーションなんだから、人間のできないような動きがあるのは当たり前じゃないのかなあ』
とか
『列車が空飛んだりするアニメーションの中身が
皆リアルだったら面白くないだろう』
などと心の中でツッコミを入れて嵐の過ぎるのを待っていました。
その翌日、和田君はアニメーション研究会を退部したのでした。
そして数ヶ月後、彩子先輩が、「和田君にはもっと色々教えたかった。何とか彼を引き戻したい」
と話しているのを耳にして、
大急ぎで、練習日の多い体育会系のテニス部に入ったのです。
和田君は、後に全国大会で優勝することになるのですが、それはまた、別のお話。
おわり
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