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「最後の伝言」・・・伝えたかった思いとは。

怖い女がよく登場する・・・と時々言われます。
女性が怖くなるのは、どこに原因がるのでしょうか?
勿論。その女性本人に問題がある時もあるでしょうし、
他に問題がある場合も。

あ。これ、女性だけとは限りませんよね。時には男性の方が怖い時もあります。

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「最後の伝言」  by 夢乃玉堂

ベッドで昏睡状態に陥っている夫の持ち物だと言って、
妻にスマホが渡された。

「永遠の愛を。ダイアナ」

事故に遭う前に送ろうとしていたのだろう、
一通のメッセージが送られぬまま残されていた。

妻は病院だという事も忘れ、悲鳴のような声を上げて夫に語り掛けた。

「あなた。勝手に天国になんか行かせやしないわ。
何が何でもこの世に引き戻すわよ」

妻は、ベッドにすがりながら泣いた。

その姿を真上から眺めながら、夫は迷っていた。

世界的大企業を動かす夫妻、
とマスコミが掻き立てたのは何年前の事だろう。
お陰で今、考えられる最高の治療を受けられ、
普通なら亡くなってもおかしくない状態でも、なんとか持ちこたえている。

心電図の波形が弱くなったり強くなったりするたびに、
空中に浮かぶ自分と、ベッドに横たわる自分を繋ぐ光の帯が細くなったり、
太くなったりしている。

「光の帯が切れたら、私は天に召されるんだろうな」

夫はおぼろげにそんな事を考えていた。

そして、こんな状況でも意外に出来る事があるのに驚いていた。

遠くに住む年老いた両親や、自分をよく知る親しい友人に、自分の危機を感じさせられるのだ。何人かには、自分の姿を見せることも出来た。

これは面白い発見だと思った。
今、その内の一人が病院に着いだようだ。
彼女には胸騒ぎを感じさせる程度だったが、テレビのスイッチを入れさせることは出来た。それで大急ぎで来てくれたのだ。

「さあ。私に縋りついて泣いている妻よ。
今度はどんな反応を見せてくれるかな。
私が匂わせる度に我慢して、冷静に妻の座にしがみ付いていたカレン。
もうすぐ、君の会いたかった秘書のダイアナがやって来るよ。
私は君がどんな顔をして、どんな事を言うのか、楽しみで仕方ない。
せめてそれを見て大笑いするまでは、
この光の帯が切れない事を祈ろう」

病室のドアノブが、回る音がした。


                      おわり


前作「死者のアカウント」と対をなすような作品。
自分が亡くなった後の事を考える余裕があれば良いですが、
急な事ではね。

この作品は、毎週木曜日16:00~放送のSKYWAVE FM 「清原愛のGoing愛Way!」の「めざせ100怪!ラジオde怪談」の朗読候補作として提示していた作品です。

*一部加筆改訂

「清原愛のGoing愛Way!」の詳細は、清原愛さんのフェイスブックなどでご確認ください。

https://www.facebook.com/kiyoharaai


また、オリジナルの朗読に使える作品集をAmazonにて販売しています。
下記よりご確認ください。

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夢乃玉堂
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