「ミラクルマン」・・・超ショート怪談。登山隊にいる幸運な男とは。
頂上を目指すアタックチームが、ベースキャンプを出発して13時間。
尾根を縦走して6時間ほどで頂上に着くはずだったのだが、
天候の急変は予想をはるかに超えていた。
激しい吹雪が止む気配は無く、
ほんの1メートル先も真っ白で何も見えない。
振り返っても、雪の上に残した足跡すら、数分でかき消されてしまう。
「大丈夫だ。安心しろ!」
リーダーが声を掛ける。
天候は荒れ続け、急変し、
リーダーが振り向いて声を掛けた。
気持ちがくじけそうになる時に声を出すのがリーダーの役目だ。
「俺の前を歩く赤い帽子の彼は、ミラクルマンだ。
すごい幸運の持ち主なんだ。今まで彼が参加した登山隊は
全員無事山を下りている。
勿論、死者は一人もいない。だから、安心して足を止めるな」
リーダーの言葉は心に沁みた。
絶体絶命の危機においては、根拠のないジンクスでも希望を与えてくれる。
普段ならば、だが・・・
今回は残念ながら、そうもいかない。
なぜなら、「ミラクルマン」はいなかったからだ。
ベースキャンプから頂上を目指したアタックチームは、
俺とリーダーの2人だけなのだ。
おわり
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