「自転車を食べる男」・・・素直に受け止められなかった言葉。
小学生の頃だったと思う、教室の後ろ、掲示板に貼られた紙の中に、
その標語はあった。
「何でも食べるよいこ」
要は「食べ物の好き嫌いは止めましょう」という事なのだが、
ある日、生徒たちは素直に受け止められなくなってしまった。
理由は、ひとつのテレビ番組だった。
「○○スペシャル」といった類の特別番組と記憶しているが
曖昧なところはご勘弁を。
その番組に、
「自転車を食べる男」という人物が登場した。
フランス人のミシェル・ロティートという人だ。
この人、胃腸が特異体質なのか、
とうてい人間の食べ物では無いものを食べると言う。
電球や木、鉄などを食べるのだ。
勿論、かじりつくのではなく、細かく刻んで、飲み込み、
胃腸を傷つけることなく、排せつする。
文字通り、「食べる」のだ。
この番組でも、来日してから、
およそ1cm四方の小さな(と言っても十分大きいが)サイズにまで
切断された黄色い自転車のかけらを、丸々一台分食べてしまったという。
スタジオでも、叩き割った電球の欠片をいくつか食べていたように思う。
さらに、
スタジオのゲストの前に、実際に食べて排泄した金属の破片が
置かれ、紹介されていたが、そのゲストが、「排泄物」と聞いて
飛び上がって、距離を取っていた。
「驚くのはそこじゃないだろう」
と、小学生ながら、ツッコミを入れていたのを覚えている。
そんな番組を見た後だから、
「何でも食べるよいこ」
という標語には、皆、苦笑していたのだった。
ちなみに、このミシェル・ロティートさん、
その後、セスナを一機分食べたらしく、「セスナを食べた男」として
世界では知られているらしい。
医者が調べたところ、胃や腸の粘膜が人より丈夫で、
異物を食べる時に、大量の油と一緒に流し込むことが
金属でも食べられる理由ではないかと推測している。
ミシェル・ロティートさんは、
特に胃や腸に大きな病気を持つこともなく、57歳で亡くなった。
ミスター完食に、賛辞を贈るが、決して皆さんは真似しないでください。
特によいこのみんなはね。