
「待ち合わせはダメよ」・・・忠告を無視すると。
さて、私の作品には、よく老女が出てきます。
おせっかいだったり、罠に落したり、ただそこにいるだけ、というのもあります。
今回は老女の忠告にまつわるお話。
この作品は、7月25日に朗読として放送されたものです。
どうぞおたのしみください。
*一部加筆。
・・・・・・・・・・・・
「待ち合わせはダメよ」
彼氏と初めての旅行。
荷物を揃えてオープンテラスのカフェで彼を待っていたら、
季節外れの黒いケープを着た白髪の老人が話しかけてきた。
「待ち合わせかい」
「ええ」
「悪いことは言わない。待つのはおよしなさい」
「変な事言わないでください」
少し語気を荒げて行ったが、老人は引き下がらなかった。
「私は霊能者だ。あなたには、危険な影が近寄っている。
待ち合わせはやめなさい」
アタシは老人を無視した。
これから楽しい旅行なの。彼を待たないでどうするって言うのよ。
確かに彼は時々手が出るけど、その後は優しいし、
危険な影だなんて言われるほど悪い人じゃないわ。
そもそも、何でアタシの彼氏の事を知ってるのよ。
老人はずっと話し続けた。
「悪いことは言わない。その男を待たずに帰りなさい。
帰らなくても良いが、さっさとどこかに行きなさい」
「しつこいですよ。お店の人、呼びますよ」
と言い返した時だった、
暴走したトラックが、歩道を乗り越え、カフェに飛び込んできたのだ。
気が付くと、重いタイヤの下敷きになり、
首が変な方向に曲がってしまったアタシの体を
アタシは呆然と見つめていた。
アタシの横で、老人が呟いた。
「だから、待つのはおよしなさいって言ったでしょう。
待ったまま亡くなったから、あんたはずっとここで
待ち続ける事になるんだよ。ヒヒヒ」
老人の言う通り、アタシは今もそこで待っている。
魂がその場に縛り付けられ、行く事も戻る事も出来ずに
何かを待っているのだ。
何を待っていたんだっけ・・・そう、随分と長い間。
もう何を待っているのかさえ、分からなくなってきた。
おわり
*放送された作品に、一部加筆しています。
「めざせ100怪!ラジオde怪談」は、 SKYWAVE FM89.2の番組「清原愛のGoing愛Way!」(https://www.892fm.com/)にて毎週木曜日16:00~放送中)内で、2か月、もしくはそれ以上の期間を使って、100の怪談を特集する「怪談朗読特別企画」です。
俳優、声優、朗読家など、語りのプロが朗読した怪談話、さらには実際に体験した怖い話不思議な話をお届けします。

#怪談 #短編 #ショート #不思議 #恐怖 #幽霊 #インターネットラジオ #声優 #怖い #俳優 #声優 #SNS #めざせ100怪 !ラジオde怪談 #清原愛のGoing愛Way ! #SKYWAVEFM #待ち合わせはダメよ #待ち合わせ #彼氏 #彼女
いいなと思ったら応援しよう!
