「窓に白い手」・・・真夜中に脅かして来たのは？　「ラジオde怪談」

「めざせ１００怪！ラジオde怪談」は、「清原愛のGoing愛Way！」（SKYWAVE FMにて放送中）の番組内で１００の怪談を特集する「怪談朗読特別企画」。

その為に用意した怪談を紹介していきます。

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「窓に白い手」

大学２年の夏休み。
一人暮らしの友人宅に泊まりこみ、
アニメーションの撮影をする計画を立てました。

その友人仮にAくんのアパートは、野中にポツンと建っている
平屋の一軒家。
窓も木枠にすりガラスが嵌め込んでいるという昔ながらの造りの
古い木造住宅です。
おまけに辺鄙な場所にあるためか家賃も格安だったそうです。
おかげで真夜中まで撮影していても
文句を言われたことはありませんでした。

その日作るのは、蝋燭一本の明かりだけで撮影する
長時間露光のアニメーション。
元は、夜景や星空をはっきりと撮影するために開発されたものですが、
フィルム一コマずつポーズを変えて撮影し、
実写のアニメーションをつくろうと考えたのです。

現代のようにその場で確認できるカメラも無く、光の少ない暗い場所で
シャッターを数秒開いてフィルムを露光させ、一旦シャッターを閉じて
次のコマに送り、また開いて露光させるてコマを送る、
という地味な作業を繰り返すのです。

普通に撮影すれば、１秒は１秒で済みます。
ところが、この方法では、１コマを撮影するのに１～２分かかり、
３分、５４００コマの作品を撮影するのに５４００分。
２時間以上かかります。

大学のアニメーション研究会のメンバー２人も誘って合計４人で撮影開始。
蝋燭一本で、部員の女子をモデルにして撮影を始めたのですが、
一コマずつ撮るので、やはり時間がかかります。

「俺たち夜食の買い出しに行って来るよ」

と手の空いた男子二人が少し離れたところにあるコンビニまで行く
と言い出しました。

時計を見るともうすぐ２３時。確か少しお腹が空いています。

よろしくとお願いして、私はモデル役の後輩と撮影を続けました。

男女で部屋に残っているので、少し色気のある雰囲気になるかと
思ったのですが、蝋燭一本の撮影は、色気よりも恐怖の方が勝って、
内心、早く買い出し班が帰ってくる事を祈っていました。

そして、およそ１５分くらい経ったでしょうか、
突然、撮影している部屋の窓が、
バンバンと平手で叩かれたのです。

すりガラスの窓ガラスに、白い手の平が透けて見えたのを記憶しています。

「うわ～！」

と、思わず二人で声を上げ、体を寄せ合いました。

しかし、その後は何もありません。
恐る恐る、窓を開けてみると、周りにはくらい畑が広がるのみ。誰も居ません。

「きっと買い出しに行った奴らが、脅かしたんだよ」

と二人で玄関の方を見つめていても、中々ドアが開く様子がありません。

「まあいいや。入ってきたら思いっきり怒ってやろう」

「はい。絶対許しませんよ」

私たちは仕方なく撮影を続けました。

それからさらに３０分くらい経ったでしょうか。

「ただいま～」

と買い出しに行った二人が帰ってきました。

私たちは早速、先ほどの事を糾弾しました。
ところが。

「え～。俺たちたった今帰った所だよ。
一軒目のコンビニが臨時休業で、その先まで
行ってきたから、この時間までかかっちゃたんだよ」

と言います。

証拠だと出されたレシートを確認すると、確かに遠い場所にあるコンビニ。
時間もほんの数分前のものです。

「確かに誰かが叩いたんだよ」

「ほら、こんなふうにさ」

私は再び蝋燭の明かりだけにして窓を半分開け、
身を乗り出して、外から平手で窓ガラスを叩いて見せました。

「こうやって、はっきり手が窓を叩くのを見たんだよ」

やって見せても、中にいる三人は固まったように
動きません。私は証拠を突き付けられて答えられないんだと思いました。

「ほら、やっぱりだ。誤魔化すなよ」

「いや。誤魔化すつもりはないんだ。
お前は窓を叩く手を見たんだろう」

「そうさ」

どや顔をして私は答えました。

「じゃあさ。ちょっと俺がやってみるから、
中から見ててみろよ」

買い出しにいった友人が私と交代に窓から身を乗り出して、窓ガラスを多々浮いて見せてくれたのです。

すると、窓のすりガラスが厚いのか、
蝋燭の光では暗すぎるのか、
中からは叩いている手が見えないのです。

「蝋燭の灯りが弱すぎるから、外で何かあって見えないんだよ」

「じゃあ。あの手は一体誰だったんだよ・・・」

その日は、もう撮影などする気が起こらず、
布団を敷いてそのまま寝てしまいました。

もう一つ困ったのは、家主である友人が
怖くて一人で寝られないから、と
私の下宿にしばらく泊まり込むようになった事でした。

　　　　　　　　　　　　　　おわり

このお話は、学生の頃の体験談からヒントを得ています。
実は、この下宿人、親戚から「その下宿の近くに、何かの境界線があるんだよ」と言われたそうです。真実は分かりませんが・・・。

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