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「ユニコーン人形に見せつけた夜」・・・怪談。オカルトを信じない彼女が取った行動とは。
大学の学園祭でお化け屋敷をやった。
子供じみた企画だったが、脅かす方は本格的にやってみようという事になり、準備のための部屋として、一人暮らしの俺の部屋が使われることになった。
黒いカーテンや白い着物、流血に見せるためのメイク道具などが運び込まれ、しばらくは寝る場所にも困るほどだった。
だが学園祭が終わると、集まった荷物は持ち主の元に帰って行った。
ただ一つ、ユニコーンに乗った子供の人形を除いて。
額に角を伸ばした青いユニコーンの上に、オレンジ色の服を着た子供の人形が乗っている。そんな人形は、友達の誰に聞いても持ち込んだ者はいなかった。
勿論、引き取ると言い出す者もいない。
「もう捨てちゃって大丈夫だよ」
と皆が言うので、燃えるすゴミの日にビニール袋に入れて
集積所に出した。
ところが夜になると、その人形は部屋の棚の上に戻っていた。それから何度朝に出しても夜には棚に戻って来る。
俺は少し気味悪くなってきたが、
一年前から付き合っている有菜は、
人形が帰って来ると聞いても、全く気味悪がらなかった。
オカルトなどこれっぽちも信じないタイプなのだ。
「じゃあ。この人形が帰ってきにくいように
思いっきり見せつけてやろうよ」
挑発的な事を言ったその日の有菜は、ベッドの中で恐ろしく積極的だった。
そして翌日、二人でゴミ集積所に人形を出し、
ゴミの収集車に積まれて行くのを見届けて部屋に戻った。
「これだけ見せつけたら、気まずくなって帰って来ないでしょ」
有菜は明るく笑って自宅に帰っていった。
俺もこれで解決する、有菜がいれば何でも大丈夫な気がした。
その夜、人形は帰って来なかった。
久しぶりに俺は穏やかな夜を過ごした。
次の日、大学に行くと、泣きはらした女子から
有菜が亡くなった事を聞かされた。
「目撃した人によると、夜中に何かを追いかけていて、自宅マンションの8階から、下の駐車場に落ちたみたいなの。駐車場が血まみれで大変になってたらしいわ」
俺は、その後の授業を全てサボって自分の部屋に帰った。
現実を見るのが恐ろしくて、有菜のマンションに行く事も出来ず、一人明かりも付けずに、ぼおっと膝を抱えてベッドに座っていた。
ふと、何かが動く気配がして、部屋の隅にある棚を見た。
すると、そこにあのユニコーン人形が帰っていた。
オレンジの服はボロボロで、青いユニコーンのボディにも細かい汚れが付き、額から伸びる角には、赤い液体がべったりと付いている。人形の黒い目は片方つぶったままで、まるでこちらにウインクを送っているように見えた。
「これは本当は怖い事なんだろうな」
と思ったが、有菜を亡くした喪失感が余りにも大きくて
何も感じなかった。
ただ、それから5年。俺は人形を捨てるのを止め、
就職で転居してもずっと一緒に過ごしている。
おわり
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